in 【音楽室】 イントロダクション 2 しかし期待されているようなので、とりあえずは食べてやり、それから箱を突き返した。 「もう行っていいスか」 「おいしかったかな?」 「…まぁまぁ」 正直、口の中がぱさぱさになって水が欲しくなったけれど、そんなことを言うのも面倒なのでおざなりに褒めてやると、彼は嬉しそうな顔をした。 普段は校長室に引き篭っているという話だが、たまに出てきたかと思えばクッキーを配り歩いているとは、よほどの変人だ。 「ハッピー・【クロッカス。・デイ】」 そう言って手を振る校長に背を向けて、音楽室へ向かった。 訳が判らない。 到着した、廊下の端の部屋。防音の分厚い扉を開いて、中にいた人物に渉は少しだけ首を傾げ、口の端を上げて見せた。 「…よぉ」 「校長、どちらへ?」 「うん。この良き日にたくさん可愛がってもらえる幸せな子達に、先駆けてプレゼントを」 「ああ、今日でしたか」 「そう。たっぷり楽しめるようにね。やっぱりせっかくのフィニッシュに、順番の問題で『出ない』ってのは興ざめだろう? ついでに、大切なトコロで感じられるように、ちょっとね」 「相変わらずド鬼畜のド変態ですね」 「今更だ」 教頭との会話を薄笑いの内に終らせて、校長は彼らに向けてそっと呟く。 「では、3月20日を楽しんで下さい」 [*前] | [次#] /87 『頂き物』へ / >>TOP |