in 【屋上】

秋山 汐の場合 3


 

「ん?」


 シャッターを切ろうとした途端、冴が後ろを振り向いて、フェンスの向こう側を見下ろした。

「かわいい子、いた?」
「え?」

 彼はとても不思議な人間だ。突然過ぎる質問に、汐は戸惑う。

 屋上のフェンス、彼の側には校庭で、汐の立ち位置からは見えるはずもない。それに今日は、ラグビー部が全面使用する日だ。可愛い子など、いるはずが。

「な、なんで?」
「だって」

 汐が訊ねると、冴はつい、と指を伸ばした。

 その先は、汐の、股間。
 それも、膨らんでテントを張った状態の、そこ。

(えぇええええッ?!)

 なんということだ。友人の見えない紫オーラに欲情してしまったようだ。
 しかも、それに気付いてなお、そこは萎える気配を見せない。

 それどころか。

「だいじょうぶ? ヌいてくる?」

 平然と男臭い台詞を吐きながら、てくてくと近付いてくる冴に、更に躯の奥が燃え上がる。

「…ダメみたい…」
「え?」

 カメラを置きつつ呟いた言葉に、冴が耳を寄せる。
 そんな無防備な彼を、汐は気付けば押し倒していた。
 「し、お?」ぱちぱちと瞬きを繰り返す冴に、汐は微笑んだ。

「ちょっと手伝って、冴」


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