in 【屋上】 秋山 汐の場合 1 ※(撮影/拘束/挿入なし) 空が好きな冴を撮るため、汐はよく屋上へと来る。 汐は写真部で、冴にはコンテストのための被写体になってもらっているから。 冴自身、写真を撮られることはあまり慣れていないようだが、汐は彼の持つ独特の雰囲気が気に入っていた。 写真を撮ることが好きという共通点もあって、すぐに仲良くなれたように思う。 屋上へと向かう階段の途中で、誰かとすれ違った。 とりあえず会釈だけしてから、しばらくして「あ」あれは校長だったのではないかと気付いたが、もう相手の姿はない。 追いかけるのも変だから、そのまま屋上への扉を開くと、風に黒の猫っ毛を揺らしながら、冴が微笑んで立っていた。 「汐」 「さっき、校長とすれ違ったかも」 「うん、いたよ。クッキー、くれた」 「クッキー? うっそ、俺にはくれなかったー」 うわーんと泣き真似をしてみせると、冴はよしよしと汐の頭を撫でた。本当は校長からクッキーなんて別に欲しくないけど、なんとなく、冴の困った顔が見たかった。 「あ、なあ冴。俺考えて来たんだー。今日はさ、折角ここって水道あるし、虹作って撮らねー?」 「虹」 ぱ、と冴の表情が明るくなる――目はいつも通りに眠そうな感じのままだが。 早速ふたりで準備にかかる。 [*前] | [次#] /144 『頂き物』へ / >>TOP |