in 【屋上】

秋山 汐の場合 1


※(撮影/拘束/挿入なし)

 空が好きな冴を撮るため、汐はよく屋上へと来る。
 汐は写真部で、冴にはコンテストのための被写体になってもらっているから。

 冴自身、写真を撮られることはあまり慣れていないようだが、汐は彼の持つ独特の雰囲気が気に入っていた。
 写真を撮ることが好きという共通点もあって、すぐに仲良くなれたように思う。

 屋上へと向かう階段の途中で、誰かとすれ違った。
 とりあえず会釈だけしてから、しばらくして「あ」あれは校長だったのではないかと気付いたが、もう相手の姿はない。
 追いかけるのも変だから、そのまま屋上への扉を開くと、風に黒の猫っ毛を揺らしながら、冴が微笑んで立っていた。

「汐」
「さっき、校長とすれ違ったかも」
「うん、いたよ。クッキー、くれた」
「クッキー? うっそ、俺にはくれなかったー」

 うわーんと泣き真似をしてみせると、冴はよしよしと汐の頭を撫でた。本当は校長からクッキーなんて別に欲しくないけど、なんとなく、冴の困った顔が見たかった。

「あ、なあ冴。俺考えて来たんだー。今日はさ、折角ここって水道あるし、虹作って撮らねー?」
「虹」

 ぱ、と冴の表情が明るくなる――目はいつも通りに眠そうな感じのままだが。

 早速ふたりで準備にかかる。

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