in 【屋上】 イントロダクション 2 「校長せんせが、作った、の?」 「そうだよ」 「すごい」 クッキーなんて冴は作ろうとしたこともない。「いただきます」と呟いて、それからさくさくとそれを食べた。 指についたカスまで舐めて、校長を見上げる。 「おいしかった、です。ありがとうございます」 「それは良かった」 「…みんなに、配ってるんです、か?」 「ん、まぁそんな感じかな」 「校長せんせ、いいお嫁さんになれますね」 「…、そう、かな」 なんだか言葉の選択を間違ったかもしれない。微妙な顔をする彼に、冴は首を傾げた。 すると彼は困ったように笑って、 「ハッピー・【クロッカス。・デイ】」 と繰り返すと、冴の横を擦り抜けて階段へと身を翻す。 「いい記念日を」 冴はその背中に声を掛けて、彼と入れ違いに屋上へと上がってきた人物に、目を細めた。 「校長、どちらへ?」 「うん。この良き日にたくさん可愛がってもらえる幸せな子達に、先駆けてプレゼントを」 「ああ、今日でしたか」 「そう。たっぷり楽しめるようにね。やっぱりせっかくのフィニッシュに、順番の問題で『出ない』ってのは興ざめだろう? ついでに、大切なトコロで感じられるように、ちょっとね」 「相変わらずド鬼畜のド変態ですね」 「今更だ」 教頭との会話を薄笑いの内に終らせて、校長は彼らに向けてそっと呟く。 「では、3月20日を楽しんで下さい」 [*前] | [次#] /144 『頂き物』へ / >>TOP |