in 【教室】 神崎 咲の場合 2 「ね、こーた」 「ぅん?」 「問題解けたら、ごほーびちょうだい?」 「…ご褒美? 例えば?」 きょとんとした顔で恒太が言う。 やだな、こーた。こんなときのごほーびなんて、決まってるでしょう? そう言いたいのを我慢して、にこりと咲は笑った。 「ん、あとで考えるっ」 「判った、いいよ」 あっさりと肯いた恒太に、咲は胸の内で拳を握る。 優しい恒太。大好きだよ。 しばらく黙々と勉学に励む。「じゃあこれは?」と恒太が指した問題を、咲はじっと見つめた。 「…えっと、…『光栄です』?」 「正解っ!」 にぱっ、と恒太が笑う。つられるようにして、咲も満面の笑顔になった。 「すごいね咲ちゃん、もうほとんど出来てるよ」 「えへへっ、ね、ね、こーた、じゃあごほーびちょうだい?」 「あ、そっか、そうだったね。何がいいの?」 何も疑っていない表情で首を傾げる恒太の後頭部に素早く腕を回し、抱えるようにして引き寄せる。 そして驚く暇さえ与えず、その柔らかで小さな唇を奪った。 どこか、甘いような気がした。 「――ふ、ぇ?」 ゆっくりと唇を離すと、恒太がぱちぱちと瞬きをする。 咲は目を細めて、恒太のまっすぐな髪を撫でた。 [*前] | [次#] /110 『頂き物』へ / >>TOP |