in 【教室】

神崎 咲の場合 1


※(尿道攻?/前立腺攻/焦らし)

 咲はうきうきと『Easy Japanese』と書かれた薄い教材とノートを机の上に並べる。
 金の髪が揺れて、青い瞳がきらきらと楽しげに輝く。

 名前こそ完全な日本人ではあったが、彼の母は外国の生まれで、彼自身も生まれも育ちも海外、つい3年前に日本へやってきたばかりだ。
 だからときどきまだ、言葉が片言になる。

 それを気に掛けてくれたクラスメイト・大島恒太が、部活のない日の放課後に、語学に付き合ってくれると言ったときには嬉しかった。
 まっすぐな黒髪、書道部だと言う、控えめで可愛らしい少年。まさしく『日本人』とでも言わんばかりの恒太が、咲はとても好きだった。

 もちろん好きと言っても、友達――いや、大型犬が主人を好きになるような気持ちに近かったかもしれない。

 今日、までは。



 教室の引き戸が開く。
 「あ、」と小さな声がして、咲は犬のような耳があればピンっと立てているかのように、背筋を伸ばした。

「こーた、おっそい!」
「あは、ごめんね、咲ちゃん」

 困ったように笑う恒太が、咲の座る前の席につく。大きな黒い瞳が、咲をまっすぐに見据える。

「始めよっか」
「――う、ん」

 何故だろう、見慣れたはずのその顔に、どきりとした。
 恒太は顔の横にかかる髪を耳に掛けて、薄い教材を開いていく。

 そのとき、ふと咲にいい案が閃いた。

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