in 【教室】

イントロダクション 2



(もしかして、手作り、かな…?)
 校長の手作り。微妙だ。

 味の方は甘さ控えめで、特筆すべき特徴もなかったが、おいしかった。

「…お、おいしかった、です」
「良かった」

 彼はやっぱり笑ったまま、嬉しそうに言った。
 もう少し喜んで上げた方が良かったかもしれない、なんて思いながら、恒太は気まずい雰囲気に落ち着かない。


「ハッピー・【クロッカス。・デイ】」


 校長は繰り返すと、そのまま踵を返した。

「は、ハッピー・【クロッカス。・デイ】!」

 恒太はその背中に声を掛けて見送り、それから教室へと向かい、扉を開けて――。

「あ、」

 中にいた人物に、微笑んだ。


***


「校長、どちらへ?」
「うん。この良き日にたくさん可愛がってもらえる幸せな子達に、先駆けてプレゼントを」
「ああ、今日でしたか」
「そう。たっぷり楽しめるようにね。やっぱりせっかくのフィニッシュに、順番の問題で『出ない』ってのは興ざめだろう? ついでに、大切なトコロで感じられるように、ちょっとね」
「相変わらずド鬼畜のド変態ですね」
「今更だ」

 教頭との会話を薄笑いの内に終らせて、校長は彼らに向けてそっと呟く。


「では、3月20日を楽しんで下さい」



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