in 【音楽室】

滝沢 影二の場合 1


※(視姦)

 影二と渉は、ただのクラスメイトだ。
 吹奏楽部である影二と、軽音楽部である渉は、同じ音楽室を共有している部活であると言っても、音を司る活動であるが故に必ず使用曜日がずれている。

 だから話したこともない間柄。

 だが。

「隙が多過ぎンだよなぁ、渉チャンは」

 適度に跳ねさせた茶色の髪をくしゃくしゃとかき混ぜながら、影二はぼやく。

 影二の視界の先では、渉が同じくクラスメイトである秋山に犯されていた。押さえた嬌声と興奮し切った秋山の声が、少しだけ開いた窓の隙間から漏れ聞こえる。


 一度ヤってみたい。


 そう思っていたのは、影二だけではないということだ。素行も口も悪いから勘違いされやすい典型的な不良だが、渉はそれ以前に非常にひとを惹き付ける。

 いつまでもイかない渉に秋山が疲れ始め、「理由を調べてくる」という陳腐な理由で去っていくのも眺めてから、影二は降って湧いた好機にほくそ笑んだ。

 せっかく面白い状況を見学させてくれたんだ、散々苛めてやろう。

「やっほー、渉チャン」
「?! た、たきざわ…っ?」

 ピアノの足元にへたり込んで、ぜいぜいと荒い息を整えようとしていた渉が、影二の姿を見て慌てる。
 ぐちゃぐちゃになって足首や胸元に引っかかっている衣服を、懸命に戻そうとするが、遅過ぎた。

「渉チャンってすっごい淫乱なんだねぇ。めちゃくちゃに乱れてたじゃん。声もエロエロだったしー?」
「っ!!」

 かぁ、と目許を赤く染める渉。影二は楽しくなってきた。

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