in 【屋上】

椎葉 咲の場合 1


※(媚薬)

 1年の頃から好きで、でも友人としてしか見てもらえなくて、それでもいいかと言い聞かせて。
 一緒に帰ったり、遊んだりして、ずっと友人をやってきて。

 偶然手に入れた、催淫剤。
 これを与えて雪崩込めば、既成事実を作れるのではないかとか。

「…少なくとも、見る眼は変わるだろうな。それはそれで愉快だが」

 媚薬の溶けたジュースのペットボトルをかざしながら、ク、と咲は口角を上げる。

「ほんと、俺にしちゃよく耐えた方だぜ。褒められてもいいくらいだ」
「椎葉くん、なにか言ったー?」
「え? いえ、なにも言ってませんよ」

 前の席に座る赤の強い茶髪のクラスメイトが振り向いて、咲は素早く取り繕う。キャラ作りも、楽ではない。だが、冴の傍にいるためだ。

「…さて、冴は屋上、かな」

 呟いて、冴に『意識』してもらうために足を向けた屋上の入り口で、咲は凍りついた。

 Tシャツは胸までたくし上がり、ズボンと下着は右足首に引っかかっているだけの状態で、屋上の床に横たわり、震えながら空を見つめてる冴。散った白濁。


「冴!」


 咄嗟に駆け寄って抱き起こす。触れた瞬間にびくりと跳ねた冴の躯は、咲の顔を見て、ぼろぼろと大粒の涙を零した。

「しょ、うぅう…ッ」

 冴の指が、咲の黒いカーディガンをきつく握り込む。震える肩を咲が抱くと、更に咲の胸に顔を埋めた。

「ど、どう、しよ…っ」
「なにがありました?」

 本当は、聞かなくても判っている。
 こんな状況で、考えられることはただひとつだ。

- 26 -
[*前] | [次#]

/144

『頂き物』へ / >>TOP


 
 
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -