in 【屋上】 椎葉 咲の場合 1 ※(媚薬) 1年の頃から好きで、でも友人としてしか見てもらえなくて、それでもいいかと言い聞かせて。 一緒に帰ったり、遊んだりして、ずっと友人をやってきて。 偶然手に入れた、催淫剤。 これを与えて雪崩込めば、既成事実を作れるのではないかとか。 「…少なくとも、見る眼は変わるだろうな。それはそれで愉快だが」 媚薬の溶けたジュースのペットボトルをかざしながら、ク、と咲は口角を上げる。 「ほんと、俺にしちゃよく耐えた方だぜ。褒められてもいいくらいだ」 「椎葉くん、なにか言ったー?」 「え? いえ、なにも言ってませんよ」 前の席に座る赤の強い茶髪のクラスメイトが振り向いて、咲は素早く取り繕う。キャラ作りも、楽ではない。だが、冴の傍にいるためだ。 「…さて、冴は屋上、かな」 呟いて、冴に『意識』してもらうために足を向けた屋上の入り口で、咲は凍りついた。 Tシャツは胸までたくし上がり、ズボンと下着は右足首に引っかかっているだけの状態で、屋上の床に横たわり、震えながら空を見つめてる冴。散った白濁。 「冴!」 咄嗟に駆け寄って抱き起こす。触れた瞬間にびくりと跳ねた冴の躯は、咲の顔を見て、ぼろぼろと大粒の涙を零した。 「しょ、うぅう…ッ」 冴の指が、咲の黒いカーディガンをきつく握り込む。震える肩を咲が抱くと、更に咲の胸に顔を埋めた。 「ど、どう、しよ…っ」 「なにがありました?」 本当は、聞かなくても判っている。 こんな状況で、考えられることはただひとつだ。 [*前] | [次#] /144 『頂き物』へ / >>TOP |