in 【屋上】

黒川 凛の場合 7


 荒い息を整えながら凛が冴を見つめていると、吹き飛んでいた彼の正気が瞳に宿り、それから愕然とした。

「ぇ…? お、お…おれ…、せ、くす、した…?」
「…したッス」
「お、おとこ、と…?」

 カタカタ震え始める、冴の躯。

「…ッス」

 初めてだろうとは思っていたが、この調子ではどうやら、男同士でのセックスが可能だということすら知らなかったのかもしれない。どう声を掛けたらいいか迷って、凛は手を伸ばす。

「先輩、」
「ッ!」

 だがその手は、当然のように払われた。
 冴の瞳は焦点を失い、静かではあるがパニックになっているのがありありと凛には伝わった。

 凛としては恋心を自覚した相手だ――例えそれが、泣かせて啼かせたいという多少ひねくれた愛情であったとしても――、できることならきちんと処理等して、もう一度きちんと告白したいところだったが、この調子では触れるどころか顔を見てももらえないだろう。

 仕方なく、自分のペ○スだけ拭って身なりを整え、凛は立ち上がる。

「…落ち着いた頃、もっかい来るッス」

 ちらりと見た冴の瞳は、まだ怯えて震えていた。



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