in 【屋上】

黒川 凛の場合 1


※(玩具/視姦)

「あの先輩、かわいいよね」

 そう言っていたのは、ガチゲイの友人。あのときのあの下心丸見えのニヤけた面は忘れられない。
 何故ならその黒の猫っ毛をふわふわさせた先輩は、バニラの棒アイスを食べていたからだ。

 あぁ、確かに、ちょっと可愛いかも…なんて、不覚にも思ってしまった。
 凛は自分がゲイだとは思っていなかったし、普通に女の子も好きだが、それ以来その先輩――平木冴を、なんとなく気にかけるようになっていた。

 何度か、『てくてく』という擬音がぴったりな歩き方で屋上への階段を昇っていく姿も見ていた。

(…話してみたい)

 凛がこの日そう思ったのは、偶然だった。
 彼が屋上にいるかどうかも、判らなかった。

 けれど。

「…ッ、ぅ、ぅ、…っく、…ん、ん…っ」

 屋上の扉を開いた途端、凛の耳に入ったのは、そんな声。

 誰かが苦しんでいるのかと思って慌てて駆け上がったそこに人影はなくて、だが声だけがする。きょろりと視線をさまよわせた凛が見たのは、給水塔の陰で四つん這いから腰だけ上げた状態で、ズボンを膝まで脱ぎ、Tシャツを胸までたくし上げて、双丘に震える手を当てている、冴だった。

 首筋まで真っ赤にしながら必死になにかをしている冴は目をきつく瞑っていて、凛に気付いた様子はない。


 どくんと、一気に躯が熱くなった。



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