小説

受side 02


 押し黙った俺の頭を改めてくしゃくしゃと撫でると、突然男は俺の唇を奪ってきた。

「――ッ?!」
「暴れるなよ? 君の大切なお友達を助けたいなら」
「なッ?! ん、ゥ」

 ぬるぬるした舌が口の中を掻き回す。俺の目尻には気持ち悪さから涙が浮いた。

 男にキスされるなんて。
 俺には彼女だっているし、そのケは全くない。

 だが、渉を助けたいなら、という言葉に、俺は動けなくなってしまった。

 何度も何度も、角度を変えて、俺の口内を蹂躙し征服し尽くすみたいにキスを重ねて、俺はどちらのものとも判らない唾液を飲み込みたくなくて、口の端から垂らし続けた。

「っは…ッ! げほッ、お゛ぇッ!」
「…くく、君はどんなに乱れるのかな」

 嫌悪感を露わにえづく俺に構わず、男は続ける。

「取引をしよう、佐々木くん」
「げほっ、…とり、ひき?」
「なに、簡単なゲームだよ。今から君に、とっても気持ちイイことをたくさんしてあげる。それで君が…イかなければ勝ち、ふたりを解放しよう」
「イ…」

 絶句する。
 つまりそれは、男に、躯を好き勝手に弄ばれるということか。

「…ッ!」

 だが、それで渉が助かるなら。
 それに、男に弄られるのだ。気持ち悪い。つまり、イくことなんてないに違いない。

「…絶対、だな…?」
「もちろん」
「…わかっ、…た」

 渋々肯くと、男はにやりと笑って、俺を促し掌を出させると、そこに銀色のリングを落とした。指輪にしては大きく、飾りではない調整金具のようなものがついている。
 首を傾げる俺に、男は更に白く細長い布を取り出して、俺に目隠しをした。

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