in 【化学室】

浪木 咲弥の場合 1


※(異物挿入/睾丸攻/尿道攻)

 彼のことは以前から狙っていた。

 だから、彼のことを狙っている人間が他にいるのも知っていた。
 けれどまさか、養護教諭である赤羽まで。しかも、あんなにマニアックなプレイを。

 普段から、授業が理解できない振りをして質問をしに来ては期を窺っていた咲弥は、偶然ふたりのセックスを目撃してしまった。

 赤羽が去ったあとの化学室には、今更真っ青になって腰をさする彼――真尋だけが残される。
 何気ない風を装って、咲弥は化学室に入室した。

「黒川先生」
「! な、浪木か。どうした、また判らないところがあったか?」
「はい、ちょっとだけ…」

 用意してきた教科書を取り出して、困ったような顔で咲弥は笑って見せる。

 咲弥がさっきまでの痴態を知っているとは露とも思っていないらしい真尋は、腰が痛むのだろう、ぎこちない動きで咲弥の傍に寄って、色素の薄い髪を掻いた。

「俺の教え方、そんな判りにくいか? どこが判らなかった?」
「いえ、僕の理解が及ばないだけで…。この、ダニエル電池の電流の…」
「あぁ、それは…」

 面倒見よく付き合ってくれる真尋とひとしきり会話をして、それから咲弥はふと別の実験台の上に準備されたビーカー達、そしてひとつ離れて転がったガラス棒を見る。

「よく判りました、黒川先生、ありがとうございます。ところで、実験の準備でもしてたんですか?」
「あ、ああ」
「じゃあ、教えていただいたお礼として、僕もお手伝いします」
「ん? いや、教師が教えるのは当然だしな。あらかた終ってるし、いいぞ、気にしなくて」

 苦笑を刻む真尋。
 咲弥は少し俯き「そう言わずに」と笑った。

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