in 【屋上】

鈴木 翔の場合 1


※(媚薬/玩具/挿入なし)

 彼に興味を持ったのは、健康診断のとき。

 元々高校生男児が好きで、常々生徒への軽い『悪戯』を行っている翔にとって毎年楽しみなその日。
 若い躯を撫で回し、聴診器で乳首をつついて、やりたい放題なのはいつものことで、大抵の生徒はそんなことを校医が考えているなんて思いもしないから、スルーしてくれる。

 彼――平木冴も、そんなつもりはなかったのだろう。

 だが、聴診器で乳首を掠めた途端に彼は、きゅ、と少しだけ眉を寄せて唇を引き結び、身動ぎした。ところが彼自身、そんな己の反応を訝っている感じがあった。
 つまり彼は完全なノンケで、なおかつ自分のそんな可愛い性感帯を、知らないのだ。

 そんな美味しそうな獲物を、放っておく手はない。

 あいにく機会に恵まれず今日まで来てしまったが、不意に冴がよく居るという屋上へ向かってみようという気になった。
 白衣のポケットには、冴が『啼』いて『悦』んでくれるようなものを忍ばせて。




 屋上の重い扉を開く。白衣の裾が風に暴れた。

 ぼんやりと屋上のコンクリート打ちっぱなしの床に座り込んで空を見上げていた冴が、ふと振り返る。何故か制服のシャツや紺色のセーターはフェンスに袖を通されて干されていた。

「…鈴木、せんせ?」

 まさか校医が屋上に来るなどとは思わないだろう。
 翔は優しげだと定評のあるいつもの笑顔を浮かべた。

「こんにちは、平木くん」


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