悔恨と懐古

07



「14年間を埋めようとしたら遊糸が赤ちゃんに戻ってしまうようだから、ココも、赤ちゃんのときのようにしようと思って」

 そう言って橘が触れたのは、遊糸の陰毛。
 ざっ、と全身の血が引いた。

「ゃ、やだ…ッ、やめろ、やめろッ…!」

 逃げようとした足が洗面器を蹴飛ばして大きな音が響いた。
 剃刀を手にした橘は、ためらうことなくその刃を遊糸の花芯に添えて笑う。

「動くと危ないよ、遊糸。大丈夫。これからもココを私にしか見せなければ、今までとなにひとつ変わりはしないよ」
「ッそういうっ…!」

 シェービングムースが塗り付けられる。
 橘が本気であることがありありと伝わって、しかしどうしようもなくて、遊糸は立ち尽くした。


 嫌だ。嫌だ。嫌だ。
 いや、なのに、どうして、うごかないんだ。


 たっぷり立った泡が、無造作に削ぎ落とされた。同時に、陰毛もばっさりとなくなる。

「〜〜ッ!!」

 声にならない悲鳴を上げる遊糸に構わず、橘は丁寧に全ての毛を剃り落としてしまった。
 シャワーで僅かに残った泡や毛を流されると、遊糸は下半身を直視出来なかった。ただただ、すーすーする。落ち着かない。

 保護の役割を持つ毛を全て落とされた無防備なそこを、橘が満足気に撫で回す。

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