悔恨と懐古

05


 言うと、橘は両手を離し、膝を少し動かして遊糸に立つように促した。

──嫌だ。

 こんな奴に再びイかされるのは、嫌だった。だが、こうしてずっと橘の膝の上に跨っているというのも、苦痛でしかない。

 どうにか逃げられないか。避けられないか。

 動かない頭で懸命に遊糸は考えたが、結果が出るほどの時間も与えられず、「早くしなさい」と催促されてしまった。渋々立ち上がり、半歩下がって距離を取る。
 「いい子だ」と橘が言って、それからまっすぐに遊糸の目を見て微笑んだ。

「脱ぎなさい」
「ッ!」

 びくん、と肩が震えた。予想出来ない言葉ではなかったが、実際に言われると吐き気が募った。
 頭の中が真っ白になって、思わず小刻みに首を振る。

「…ゃ…っ」

 言ってしまったあとに、気付く。拒絶、してしまった。逃げてしまった。
 だが、橘は気にした様子もなくにっこりと微笑んだ。

「脱がせて欲しいのかな? 遊糸はまだお着替えも出来ないのかな」
「ッ!」

 完全に自分を幼児扱いしている橘に、遊糸は怒りよりも恐怖を覚える。橘の眼は、遊糸を見ているようで見ていない、そんな感じがした。

 笑顔の手前で、赤黒く勃起したペ○スがただひたすらに気持ち悪い。
 自分の醜態を見て興奮しているのだと思えば、なおさらだった。

- 67 -
[*前] | [次#]

『カゲロウ』目次へ / 品書へ


 
 
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -