悔恨と懐古

04



「さっきから、赤ちゃんみたいに喋れないみたいだね? 遊糸」
「ぁ…ぁ…」
「本当に引き離された頃に戻ったみたいだ。あのときの方がお喋りだったかな?」

 やたらと楽しそうな橘の声が耳に染み付く。

 もはや手にペ○スを握っているのか放しているのか、それすらも判らなくなってくる。呼吸が乱れる。

 唇を食むようなキスをしながら、橘は遊糸のこめかみに指を挿し入れて髪を掻き上げ、晒された耳に直接吹き込むようにして喋る。

「どうした? ほら、しっかり扱いてごらん。こうして…」

 固まった遊糸の手に橘のそれが重なり、無理やりに手コキをさせられた。

「うぅッ…! う、ううう…!」

 ぐにぐにと弾力を持つソレの形がはっきりと指先に、掌に感じられる。スジ、クビレ、先端のスリットまで。
 そしてその手が徐々に濡れていくのが判ったとき、背筋を冷たいものが駆け抜けて、遂に遊糸の目は大粒の涙を零した。

「ひくっ…、う、ッく、うぇっ…!」

 キモチワルイ。

 躯の奥からそう叫んでしまいたかった。サワルナ、ヨルナ、ミルナ、キエロ。そう言って、しまいたかった。

 ペ○スを握るのとは逆の手でごしごし目を擦る遊糸に、橘は呆れたような苦笑を向けた。

「こんなに優しく教えてるのに、何を泣くことがあるんだい、遊糸。仕方ない、もう一度君に実践して教えてあげようか」


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