悔恨と懐古

02



「っ! っ!」

 声も出ないほど驚いて、同時に嫌悪感と恐怖が募る。
 至近距離で橘が微笑んで、またキスされた。咄嗟に目を瞑ると、橘の唇や舌の感覚がありありと感じられて、遊糸は泣きたくなった。

 ちゅく…ちゅ、ちゅ…ちゅるっ…
「ん…ん、んぁ、…ぁ…む…」

 角度を変えて、深く深く、繰り返し交わされる口付け。
 橘の腕が遊糸の頭を掻き抱いて、お陰で逃れることも出来ない。

「う、ん…っん、ん…っ」

 舌を絡め取られ、擦り合わされる。唾液は何度も互いの口内を行き来して、もはやどちらのものかも判らない。ただ気持ち悪さだけが付きまとう。


 けれど、遊糸には拒絶することは許されていない。


 行き場のない手は、ひたすらにソファの背もたれを握り締めた。

「…遊糸…可愛い遊糸…。14年の空白を、今から埋めていこうな…」
「っは…はぁッ…はぁ…っ」

 酸欠気味の遊糸の頬に手を添えて、うっとりと橘が言う。抗うことも出来ず、遊糸はぼんやりと橘を見た。

――これは、夢だ…。

 そう思うのに、思い込もうとするのに、感覚だけがリアルだった。

 橘は自らのスラックスの前を開き、下着のゴムをずらしてペ○スを取り出した。まだ完全には勃起していないものの、嫌に赤黒くてグロテスクで、遊糸はぞっとする。

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