悔恨と懐古 01 ※橘×遊糸 (手淫強制/剃毛/挿入なし) ドアに額をつけて、扉の向こうのことを思う。 霙はなんと思っただろう。明日は殴るどころか、目も合わせてもらえないのではないだろうか。 それ以前に自分は明日、無事に学校へ行けるのだろうか。 ぞくりと、肩が震えた。 今、この扉を開ければ。 開けて、駆けて、逃げ出せば。 ――ダメだ…。 そんなことをすれば、また橘は次の生贄を探す。罪のない友人達が、何も知らない友人達が、遊糸の所為で被害をこうむってしまう。 握り締めた指先の感覚がない。背筋に嫌な汗が流れた。 遊糸は一度きつく目を瞑ると、ポケットからケータイを取り出した。 くらくらして現実味のない頭で、海へのメッセージを作る。バイト先の先輩の家に泊まるから。なんの感慨もなく、そんな嘘を送信していた。そして電源を切った。 リビングへ向かう。がんがんと頭の中で警鐘が鳴る。行ってはいけない、そう思う。 リビングでは、さっきまで霙が座らされていたソファに、橘が悠然と腰掛けていた。遊糸を見て、薄い唇が笑みを浮かべる。 「おいで」 「…ッ」 両手を広げられる。遊糸は脚を引きずるようにして、ソファに近付き、橘の前に立った。 途端、ぐいと腕を引っ張られて、ソファに膝をつく。橘の脚を跨いで、乗りかかるような格好だ。 [*前] | [次#] 『カゲロウ』目次へ / 品書へ |