隣の子 01 ※美濃川×霙 家に帰っても、橘はなにもして来なかった。 既に寝ていたのかもしれない。それを幸いに、素早く遊糸自身も眠りについた。 朝のキスも嫌だったが懸命に我慢して、舌を絡めた。 橘が不健康そうな顔を嬉しそうに綻ばせ、夢中になって遊糸の双丘を揉みながら遊糸の舌を嬲り続けた所為で、危うく遅刻するところだった。遅刻など、遊糸の素行からすれば今更ではあったが。 伊織の下へ逃げ、帰宅後もなにもされなかった。つまり、イカレた行為を強要されずに済んでいたお陰で、身体が軽い。 海や晶は勿論のこと、どこか不安気な眼をしていた霙にも、笑いかけることができた。自分は大丈夫だと。 このままなにもなく逃げ切れると思えるほど、遊糸も馬鹿ではないつもりだが。 それでも、目を逸らしていたかった。 自分だけでもなんとかするのだと。 なんとかなるのだと。 そんなはずは、なかったのだけれど。 +++ かなり薄くなった手首の痕をそっと擦る。 それは、手錠の痕。 霙が遊糸の父に──男に強姦された証だ。 蕾に指を挿入されナカを探られ、舐め回されて、そして太くて熱い他人の性器に、躯の奥まで穿たれた。 そのあとも、よく判らないいくつもの球体で蕾を割られ、それを遊糸に引き抜かれた。 あの日から、少し霙は男が恐い。 [*前] | [次#] 『カゲロウ』目次へ / 品書へ |