絡まる糸 12 現実味が、伴わない。 橘がリビングを去ってからも、自らの中に埋まっているものの所為で、動くことができない。 少し動くだけで、躯の奥のなにかをグリッ、と刺激されて、頭の中が真っ白になる。それがなんなのかが判らないから、怖い。 かと言って、このままの状態にしておくわけにもいかない。 「っ、!」 気力を振り絞って、引き抜くべく玩具の先についている輪を探す。ちゃら、とそれが指先に触れて少し安堵した。 その、矢先。 「お手伝い、しましょうか? 兄さん」 背後から、くす、と笑う声。 血の気が引く音を、聞いた気がした。 「お前…いつ、から」 「さあ、いつからかな…。とりあえず兄さんが気持ち良くなっちゃってぶっ飛んでから、ってことじゃないかな、兄さんが覚えてないなら」 「っ!」 「いやらしい…。どう? 自分でアナルパールなんか挿れちゃって。ほら、萎えてないよ?」 「ぁっ、くっ、さわ、…!」 Tシャツにジャージパンツ姿のラフな格好の六花が、ソファの後ろから抱き込むようにして、無造作に花芯を指先でなぞる。それだけでぞくっと走り抜けるなにか、堪らず身をよじると躯の中を玩具が刺激した。 「んっ、ふ…」 動けない。 改めて実感したその事実に、戦慄する。ちゅ、と音を立てて耳にキスを落とされ、「っ!」咄嗟に逃げようとして、グリグリと躯の中が掻き回されて、声が掠れた。 にィと口許に嫌な笑みを浮かべて、六花がソファを跨いで、遊糸の腹の上へと乗りかかる。両腕を持ち上げられて、腋の窪みへと舌を這わされる。 「〜っ! ば、か…っやめ、ろ…!」 「いいんだよ? 兄さん。僕からは、逃げてもいいんだ…」 ちゅ、ちゅ、と音を立てて、唇が鎖骨、首筋、耳、目尻へと移動していく。 柔らかな唇に触れられる度、ひく、ひく、と腹筋が動いてしまう。中の玩具が、あの場所を、押す。 [*前] | [次#] 『カゲロウ』目次へ / 品書へ |