絡まる糸

08


 ぬる、と手が滑って、アナルパールが腿に落ちて花芯を叩き、びくんと躯が跳ねた。
 橘は落ちたそれを拾うついでに遊糸の花芯を撫でて擽り、それからもう一度性玩具を手渡して、言った。

「自分で挿れてごらん、遊糸」
「え…」
「奥まで挿れられたら、今日はおしまいにしてあげるよ」
「ッ?! そ、な…!」

 少し遅れて、橘の言わんとすることを理解する。


 この凶悪な性玩具を、自ら蕾に押し込めというのか。咥え込んだあと、どうするというのか。


 血の気が引く。ふざけるなと、叫んでしまいたい。目の前の骨と皮だけのような顔を、思い切り殴りつけてやりたい。

 だがそれは──許されない。

 呆然とする遊糸に、橘が口付ける。口腔内に溜まった唾液を吸い上げるようにして、深いキスが遊糸の思考を奪っていく。考えてはいけないと、脳が逃避しようとする。
 橘の骨張った手が、既に冷え始めた風呂上りの皮膚を撫で回す。
 ごくりと嫌に大きな音を立てて橘が喉を鳴らす。荒い吐息を繰り返す遊糸の膝が持ち上げられて、ソファの上にM字に開脚させられた。先日の、霙のようだ。思って、頭が真っ白になる。

「もう少し腰を前にずらした方が挿れやすいよ」

 親切に見せかけた、狂った助言。
 震える手を導かれて、アナルパールの先端が、蕾へ押し当てられる。冷えた唾液に、ひゅく、とそこが収縮してしまうのが判って、口角が下がる。

「ぅ…っ」
「大丈夫。ゆっくり挿れたら痛くないからね」

 息を吐いて。力を抜いて。

 丁寧に指導されるけれど、当然のように腕はなかなか先へと進まず。
 無毛になった陰部に、力を再び失った花芯が垂れて、その奥にぬらりと光る、淫靡な玩具。
 動けない遊糸に覆いかぶさるようにして、橘がくちゅり、と耳孔に舌を挿し込んできて、「ひあッ…」ぞくっ、と鳥肌が立った。

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