絡まる糸

07


 
「ふふ。私の遊糸は本当にいい子だ。さあ、そのまま玩具を咥えなさい」
「ッ?!」

 思わず反駁しそうになって、慌てて口を噤む。
 だって、これは。

「大丈夫、消毒してあるよ」
──そういう問題じゃねぇんだよッ!

 あくまで穏やかな橘は、遊糸の心の声になど気付く様子もなく、その卑猥な玩具を口許に押し付けてくる。上下の唇の間を何度も擦られる内に、とろりと口角から唾液が溢れる。

「ン…っ」

 嫌だと、首を振ろうとした瞬間に、思い出す。拒絶しては、いけない。
 瞼を伏せて、覚悟を決め──咥え込んだ。

「いい子だ…そう、たっぷり濡らすんだよ。出し入れしてごらん」

 促されるままに閉じようとする唇へ押し込み、引き出す。丸い膨らみが舌を撫でて唾液を絡め取る。
 ぷちゅ…っ、じゅぷっ…とその度にいやらしい水音がして、頬が熱くなる。

「ン…、ふ…っ」
──な、んで…。

 腰が、揺らめきそうになる。蕾が、疼く。それを感じてしまって、羞恥に目尻へ堪えきれない涙が浮いた。


──やだ…これじゃ、俺…ッ。


 こんなものを口に咥えて、以前の痴態を思い起こして、それを、期待、してしまうなんて。


──嘘だ、嘘だ、嘘だ…ッ!


 信じたくない。認めたくない。

 開発、されてしまったなんて。

 うっすら目を開くと、橘の妙に嬉しそうな顔を間近で見る羽目になって、急いで視線を逸らす。
 と、その途中で、自らの花芯がやや力を持ち始めているのが見えて、また全身の体温が上がった。
 伝い落ちる唾液で、玩具諸共、手もべとべとだ。
 橘の手が伸びてきて、遊糸の金茶の髪を撫でる。

「いやらしい子だ」
「──ッ!」

 囁かれた一言に、震えた拍子に涙が零れた。どうしてこいつは、1番言われたくない台詞を、的確に言ってくるのだろう。

- 117 -
[*前] | [次#]

『カゲロウ』目次へ / 品書へ


 
 
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -