絡まる糸

06


 はいと握らされた性玩具を、思わず払いのけてしまいそうになる。
 鋼鉄の意思でなんとかそれを押し留め、震える手で握る。半透明なシリコン製の、丸いビーズが連なったもの。

 指先が冷たくなる。
 だって、これは。

 恐る恐る橘を伺うと、彼は濡れたままの遊糸の髪を項から掬い上げるようにして、予備動作もなく、口付けをした。

「んむっ…?!」

 唇を食み、チロチロと誘うように舐められる。嫌々ながらもそっと口を開くと、熱い塊がヌルリと口腔内を犯してくる。
 ぬちゅ、と水音。
 口の中をぐちゃぐちゃに掻き回すような動きの後、ぢゅうう、と舌を吸い上げられる。かと思いきや、とろりと舌の上に返される唾液。じんわり広がっていく感覚に眩暈がする。

 全身を硬直させる遊糸は、きつくきつくアナルパールを握り締めた。
 ぷは、と唇を離すと、不健康に青褪めていたはずの唇は血色を取り戻していやらしくてらりと赤く光る。
 互いの舌から伝い落ちた銀糸は、そのまま丸いアナルパールへと滴っていく。それは更に滑り落ち、遊糸の指へと絡みつく。
 突然のキスに息を乱す遊糸に、ちゅっと軽いキスをして、橘は更に遊糸の唇を舐める。

「〜〜っ」
「おいしいかな、遊糸?」
「…は、…ぇ?」
「父さんの舌は、おいしいかな?」

 穏やかに言われた台詞が、全く理解できずに、時が止まる。
 応えられない遊糸に構わず、橘は更に口付けを続けた。

 くちゅ、ちゅ、ちゅぱ、ちゅる、くちゅくちゅ、…

 拒絶しては、いけない。

 真っ白になった頭で、それだけが遊糸を突き動かす。
 きっと橘は、肯いて欲しいのだ。

「遊糸、お口に溜めておいて。飲み込んじゃいけないよ」
「っふ、ん…」

 ぢゅるぢゅる、くち、ぬちゅ…っ
 ヌ゛ルル…っ

「っ!」

 吸い上げられた唾液が、掻き回されたそれが、いちどきに口腔内へと戻される。熱い粘つく液体が舌の上に下に、溜まる。
 泣きそうになる。

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