長い夜の始まり

02


 悪事がバレた子供みたいに、父が無邪気にとんでもないことを言う。

「…僕に1回やって、もう2度としないって言わなかった?」
「うん、だから六花にはやってないだろう?」
「…そうだね」

 こうなった父には、もはや何を言っても無駄だった。

 以前から、遊糸のこととなると、すぐに我を忘れる。
 そして彼の生活は、常に遊糸を想うことで成り立っていたものだから、彼との生活は慣れと諦めで成り立っていた。

「そうだ、ちょうどいい。六花、そろそろ遊糸のココも父さんを受け入れられると思うんだ。見ててくれないか?」

 父親と腹違いの兄のセックスを、実の息子に見ていろと告げる彼は、狂っている。

 そして。


「うん、是非見せて?」
──笑顔を返す自分も、狂ってる。


 ふたりの腹には乾き始めた白い液体がこびりつき、その行為の長さを知らしめる。

 遊糸の性器は、本来なら萎えているだろうところを媚薬の効果で無理に半分勃たされている状態で、それに対して父のペ○スは未だグロテスクな程立派に勃ち上がり、時折遊糸のそれに擦りつけては嬉しそうに愛液を垂らす。

 なにもかもが、狂っていた。

 六花はゆっくりと遊糸に近付くと、そっと頬に手を当て、声を掛ける。

「兄さん」
「っは、ぁ…ン、く…っ、ぁ、ぁ、」
「ねぇ兄さん、僕を見てよ」

 六花の言葉に、遊糸は応じない。

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