「アキバ!後ろ!」
ミタカの声にハッとして振り返る。
見れば野球ボールが俺に向かって飛んでくる。
そういえば体育の授業中に意識が途切れたんだった。
さすがに避けられない―なんて頭はいやに冷静で、でも体は全く動かなくて。
妙にあせったミタカがこちらに駆け寄る姿がやけにスローモーションで見えた。
予想に反して衝撃は横からやってきた。
誰かにタックルされたかのようだった。
それからグン、と浮遊感。
…俺、酔いそう。
ドサッと地上に落とされたことで、自分は誰かに抱えられていたことに気付く。
なんだったんだ。
「――危機一髪。」
上から降ってきた声に空を振り仰げば数学の授業中に「夢」で見た金髪の女の子。
なぜ、どうして、声にならない疑問ばかりが頭を埋め尽くす。
「っ!そうだ、グラウンド!
どうなって…!」
授業中にどっか消えるとかマジヤベェ、殺される。
しかし、見下ろしたグラウンドは、俺がいたあたりを中心に大きなクレーターができあがっていた。
いくらか倒れてる生徒も見受けられる。
「…おい、たかが野球ボールだろ。
なんでこんなことになってんだよ…。
そもそもあのボールどっから…」
口に出して初めて気付く。
そうだ、あのボール、一体どこから。
俺たち、今日はカバディしてたじゃないか!
野球はグラウンドのどこでもやってなかった。
…そして、俺はある仮説に辿り着く。
「あれは…野球ボールじゃ、ない?」
「……正解。アレは対地上用降下式爆弾
『パワプロクン』。野球ボールに似せることで街中でも怪しまれない仕様。」
「逆に怪しいわ!
なんだそのふざけた名前!
版権引っかかるぞ!なんであんなのが学校に落ちてくるんだ!訳が分からん!」
冷静に話す女の子に理不尽な怒りがわく。
「それにアンタ、なんで俺を助けた?」
ビシっと指をさして問えば相変わらず女の子は無表情。
風にツインテールをなびかせている。
「あなたに死なれては困る。あなたはカギ。」
「…カギ?」
なにそれおいしいの?
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