「――七番目はミンチがお好きらしい。いや、実に結構。」

唐突に背後から聞こえた声とやる気のない拍手。


眉をひそめ振り返れば、そこにいたのは明るい茶色の髪を緩く一括りにした男。
深い色のシルクハットが妙に印象的な…

「…だれ?」

 私の間抜けな問いにその男はさも愉しそうにくつくつと笑った。
なんか癪にさわる。なんだコイツ。

「失礼、七番目のアリス。私は帽子屋。
あなたを迎えにまいりました。さあ、五番目と六番目がお待ちですよ。」

 そう言って手を差し伸べる男。
その胡散臭さに免じてガトリング砲をしまってやる。うん、わけわかんないね。

「しかし七番目は大層な武器をお持ちだ。あなたならハートの女王の願いを叶えられるかもしれない。」

 楽しそうに落ち葉をサクサクとならしながら帽子屋は私の先を歩く。
所々に不穏な言葉を散らして。

「ハートの女王?」

 帽子屋の不穏な台詞に眉をひそめる。
願いを叶えるっちゃなんぞや。そんなことのために呼ばれたんか私は。

「女王はこの世界を治める偉大なるお方。まぁ、元はあなた方と同じ…おっと、口が滑りました。いずれ分かりますよ。」

 なんだそれ。
いちいちむかつくなこの野郎。

「さあ、ついた。お茶会へようこそ、七番目のアリス。」

 こちらを振り返り、両腕を広げて帽子屋は笑った。
その細められた目は血のように赤く、爛々と輝いていた。

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