…そして、それは唐突にはじまった。

うなだれる私に穏やかな笑みを浮かべていたレイシーさんの空気がピン、と張り詰める。

「さぁアリス、初仕事よ。」

 短く言って前を睨みつけるレイシーさん。

「これは"六番目"が追いかけているのね。さあ、武器を。貴女がこの世界で闘うために求める武器を願うの。」

 私はもう一度目を閉じて手を組んだ。私が闘うための武器。


虚空に手を差し伸べれば
ズシリ、と重い感触。

「…これが、私の武器。」

黒くて重量感のある巨大な円筒に
様子をうかがっていたレイシーさんの顔が引きつった。

「…マシンガン。生身の人間、しかも少女が扱うものじゃないわよね、これ。」

「正しくはM61 バルカン。
ゼネラル・エレクトリック社の開発したガトリング砲です。
航空機関砲としての役割が大きいですね。
地上部隊では低高度防空用として使われてます。」

「……えーっと、それ手持ちで使う武器じゃないわよね?」

「違いますね。」

 しばし呆然としたレイシーさんはため息をつく。
うん、どう見てもマニアックな趣味だもんね!


「さあ、アリス。始めましょう。
うさぎ狩りの時間よ。
お互いの狩り場は背中あわせで反対方向ということで。」

 その化け物みたいな武器の餌食にはなりたくないもの。

そう言って笑うレイシーさんに苦笑をかえしてガトリング砲を構えた。

「ところでうさぎ狩りって基本的にうさぎを戦闘不能まで叩きのめせばいいんですよね?」

私の確認にレイシーさんが頷く。

「ええ。狩るうさぎは白うさぎだけよ。
けして三月うさぎを狩ってはだめ。
…注意してちょうだい。」

「三月うさぎ?」

「ヤマネと帽子屋と一緒にいるから大丈夫とは思うけれど…気をつけてちょうだい。」

「よくわからないけどわかりました。
とりあえず白いのだけ殺ればいいですね。」

「そういうこと。
とりあえずそれだけできれば上等よ。
貴女の武器は他のものも灰にしかねない。」

「そこらへんはうまくやります。
大丈夫ですよ。」

 それこそ不思議の国なんだから、砲弾の効果を限定してしまえばいい。
白うさぎ以外のものに当たると砲弾が消失する方向で行こう。
そうしよう。とりあえず。


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