「あら、チェシャ猫。
おかえりなさい。早かったわね。
七番目は見つかったかしら?」
巨大化け猫に手を引かれてやってきた森の奥にいたのは、綺麗な金色のボブヘアーに黒いリボンをした、水色のワンピースの少女。…まぁ、同い年くらいだけど。
「もちろんさアリス!ほら、七番目だよ!」
巨大化け猫はチェシャ猫というらしい。
もしかしなくても不思議の国のアリス的な展開ですかね?これ。
「あら、七番目は綺麗な黒髪ね。
初めまして、アリス。私はレイシー。
レイシー・オルフェット。
五番目のアリスです。」
ワンピースの裾をつまんで一礼する少女はレイシーさん、というらしい。
私もペコリ、と頭を下げることにする。
「初めまして。夏木有珠です。
えっと、ところでその五番目とか七番目ってなんですか?
あと、一体ここは?」
私の問いにレイシーさんはあら、と目を見開いてチェシャ猫をみやる。
猫は気まずそうに頭をかく仕草をした。
「やだ。説明していなかったの?チェシャ猫。」
このクソ猫、という声は聞こえなかったことにする。
「私たちはこの世界を”不思議の国”と呼んでいるわ。
実際のところは私たちがいた世界の平行世界と言うべきかしら。」
「平行世界?」
「そう。いつの間にか生まれた世界の歪み。そして私たちはここでうさぎ狩りをしなくてはならないの。」
この世界は不思議の国のアリスをモチーフにして構成されているものの、本質は全く違うものらしい。
私たち[アリス]の使命はハートの女王がこの世界中に放った白うさぎを殲滅することなのだそうだ。
そして、アリスになれるのはアリスの名を持つ者のみ。
その[アリス]は私で七人目だということ。
「レイシーさんはどの辺がアリスなんですかね?あ、ミドルネームとかですか?」
「私はミドルネームを持ってないわ。
レイシーのスペルを並び替えるとアリスになるの。アナグラムってやつね。」
「なるほど。」
一通り説明を受けて納得した私にレイシーさんは微笑んで手を差し出す。
「さぁ、アリス。
私たちと闘ってくれるかしら?」
←Back・Next→