霜柱に足跡



「さっむ!」
玄関を出ると、びゅうっと冷たい風が頬を叩く。
思わずマフラーに顔をうずめた。
タ「なまえはよ」
カ「おはよー」
ダ「寒いね」
「おはよう」
今日も今日とて待っていてくれる3人組。
ふざけていたのか、三人ともほっぺたが赤くなっていて、全然寒くなさそうだった。
「男の子っていいねー」
タ「あ?なにがだよ」
「寒そうじゃないじゃん!」
そう言って、ずり落ちかけたマフラーを直して、また顔をうずめた。
タミヤが直せよ、と仏頂面でマフラーを下に下ろす。
「やっやめてよ寒いんだから!」
タ「前見えなきゃ危ねえだろ!」
あらわになった顔に、冷たい風が吹き付けた。
カ「タミヤくんお母さんみたい〜」
タ「おう!リーダーだからな!」
そう言って、緑の手袋をしたまま、私のほっぺたを挟んだ。
冬の朝独特の、透明な光に世界が滲む。
タミヤの匂いがした。
タ「お、今日なまえタイツじゃん」
「そー。寒いもん!」
皆で並んで歩く。いつもハイソックスだったけれど、今日はタイツでなければ寒すぎた。
ダ「なになに?タミヤくん急にどうしたの?」
タ「んー俺タイツ好きなんだよな。膝とか、たまに肌色透けるじゃん。あれ良くね?」
カ「ふーん。タミヤくんがそういうこと言うの、珍しいね」
タ「まあなー」
中学に上がってから、この手の会話が増えた。小学生のときなんてませちゃって、タミヤなんか「興味ない!!」の一点張りだったのに。
ダ「なまえちゃんは?男子の好きなとことかあるの?」
いきなり振られて、思わず悩んでしまう。
「そーだな、ぽんぽんとかついてる、可愛い帽子似合ってたりするとギャップがいいよね」
ダフは学生帽。タミヤはなにも付けておらず、カネダはぽんぽんの帽子をかぶっていた。
問答無用でタミヤが奪う。
タ「どうだこれ?」
一瞬沈黙が流れてから、笑いが込み上げてくる。
ダフもカネダも心底楽しそうに笑ってるけど、意外にも似合ってて、私が言ったからかぶってくれたのかな、なんて勝手に期待してみる。
そんな馬鹿なことをしながら、彼らは螢光中へ、わたしは駅へと別れる道へ来た。
人通りも賑やかになって、タイツを履いてる女の子もちらほらいる。
またね、と別れたあと、このタイツの子達も、タミヤの妄想に一役買われるんだろうかと落ち着かない心に知らんぷりを決めたまま、改札を通り抜けた。

カ「見て、タミヤくん!タイツの子いっぱいいるよ!!」
ダ「ちょっとゆっくり歩いてこーよ」
タ「えー早く行こうぜ、さみいよ」
ダ「えっ」
カ「なんで??」
タ「なんでって…別になまえ以外のやつのタイツに興味ねえし」
カ・ダ「「なーるほど…」」
なまえちゃん、君の好きな男は助平心に負けない大変良い男です。



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