枯れない花をもらった


「なまえちゃん。これあげる」
そういって差し出されたのは、紫色のチューリップだった。
「ありがとう!…珍しいね、むらさきいろ」
すこし頬を紅くして、ふふっと笑った。
「ちゃんと、意味があるんだよ。この前授業で花言葉を調べたんだ」
「じゃあ、紫色にも意味があるのね」
りくは、より一層紅くなって、すごく小さい声で「うん」と頷いた。
恋人が送ってくれた花なのだ。
意味を聞いたらヘンかな…?
「ねぇ、意味は?」
りくを見上げると、時計を見つめて泣きそうな顔をしていた。私の問いに気づくと、慌てて笑顔になる。
「……言えないや」
私の大好きな笑顔の奥が、涙で濡れていた。
「ねぇ、りく……」
「あっもう行かなきゃ!」
時計をちらっと見ると、わたしに微笑んで走っていってしまう。
「毎日、なにしてるの……」
言えなかった問いが空に漂う。彼の、去り際の「ばいばい」がいやに耳に残った。

チューリップが枯れた日、りくは国道で発見された。
りくが奇妙に曲がった日、私は庭のすみに同じ球根を植えた。
紫チューリップの花言葉は、「永遠の愛」だなんて。図鑑じゃなくて、君の声で教えてもらいたかったよ。
ねぇ、りく。




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