夜行列車


お互いになんの興味もなかった。
同じ匂いがする。それだけ。
それだけのことでかけがえのない存在になった。だからだと思う。こんなことを、するようになったのは。
「カネダ」
「なぁに、なまえちゃん。」
カネダの胸板にはなの先をすりつける。
カネダの匂い。
わたしの匂い。
「なまえちゃん?」
「寝よう?」
「うん」
カネダの足が絡んでくる。
もっと深く。もっと安心させて。
胸に耳を押し付けて、鼓動を聞く。カネダはわたしの頭にはなを押し付けて、深く呼吸をする。
それは、わたしより少しだけ大きいカネダと、カネダより少しだけ小さいわたしで完成するジグソーパズル。たった二つピースだけのパズルは、なんて安易なんだろう。
だけど、わたしもカネダもこうせずにはいられないのだ。お互いの温もりを知ってしまってから。
服も。
空気も。
今日あったことも。
嫌なことも良いことも。
感情でさえ。
ふたりの間にあるものはすべて取り去って、直接肌と肌が触れ合って、ようやく手に入れるもの。
それは愛なんかじゃなくって、きっとすごくすごく汚いもので 、でも、私たちには必要で。
だけど、欲しかったのは愛だった。

静かな寝息が聞こえる。
身をよじらせて上を向けば、幸せそうな顔のカネダがいた。
「…おやすみ、カネダ」
男女が裸で抱き合って眠る。
世間一般では、それは愛を求めるものなのだろうけど。わたしとカネダは、互いの温もりを求めるだけ。自分と同じ、傷だらけの温もりを。
それなら、この行為はなんなのか。
そんなことを考えてるうちに、微睡みがやってきた。この行為は、愛じゃないけれど、愛であればと願う心に蓋をして、わたしはそっと目を閉じる。

おやすみなさい。
誰かに愛される夢が見られますように。



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