ならば仕方ない
※クラス会か何か
「ガードかたっ!」
莉桜ちゃんの視線が私の首元に向けられているのに気づき、「ガード?」と繰り返すと、詰襟の部分を指さした。
「肩とかブラ見せろとは言わないけど、もっと首元が楽な服ないの?」
「寒くなってきたし……」
「せめてボタン一個外そ!」
言うや否や伸びてきた手と、首の開放感。「うん、こっちのがいいって!」と言われてしまえば、何も返せない。
「あれ、ボタン外したの?」
身長差を埋めるように、赤羽君が大きく体を傾けた。のぞき込まれることが恥ずかしくて、咄嗟にあごを引く。
「えっと、莉桜ちゃんが、……」
「ふーん」
彼は興味なさげに相槌をうったわりに、しばらく私の首元を眺めていた。じろじろと首筋に向けられる視線に居心地の悪さを感じていると、彼が不意に胸元へ触れた。びくりと身構える私に構わず、襟の部分に指をすべらせる。心臓が痛いほど跳ね上がった。
「こっちの方がいいんじゃない?」
気づけば彼は離れていて、首元にはわずかな窮屈さが残っていた。彼の触れたところを指先で確認し、またボタンがしっかりと止められていることに気づいた。
「あれー?戻しちゃったの?」
「ご、ごめん。赤羽君が……」
莉桜ちゃんに会った時、がっかりしたような声を挙げられたので、とっさに言い訳した。赤羽君ごめん、と心の中で謝っていると、途端に莉桜ちゃんの顔つきが変わる。にやにやと口元を緩ませ、「そっか、カルマかぁ」と呟く姿は嬉しそうですらあった。
「それじゃ仕方ないね」と彼女は離れていく。私は慌てて、莉桜ちゃんにごめんねとありがとうを言った。彼女はまだにやけながら私に手を振りみんなの元へ戻っていった。
End
161227
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