【フリリク】ドキドキ☆夏の肝試し〜お漏らしもあるよ!〜I 「な、なんで…司が…え?」 いきなり現れたやつに、ただでさえこんがらがっていた俺の頭は更にこんがらがる。 「なんだ、もういいのか?」 「ええ、データも充分に取れたので」 「で、でーた?」 不穏な響きに思わず聞き返せば、こちらに向き直った司は小さく頷いた。 「ああ。大学のレポートのため、店長たちに許可を取って店員のやつらで実験をした」 「レポート…?ってか、店長たち?」 「偽の噂を流すために紀平さんにも協力してもらった」 なんだって。 笑顔で面倒を押し付けてきた紀平さんを思い出し、全身から血の気が引いていく。 まさか、全て知った上であの人は俺を試そうとしたのか。 となると、よからぬ可能性が沸いてくるわけで。 「……じゃ、じゃあ、四川とか笹山も、あいつら知って……」 「四川は知らないだろ」 「笹山のやつは気付いてたみたいだけどな」 店長の一言に、なんだか頭を殴られたような気分だった。 あれか、ようするに俺はハメられたということか。 そう頭の中で理解した時、四肢からがくりと力が抜けていく。 「な…なんだよそれ…」 なんだかもう立って居られないほどの脱力感に襲われ、その場にへたり込む俺。 二人の視線がこちらを見下ろす。 「原田」 「お前の課題のせいで、漏らしたってことかよ…俺…っ」 「でも、いいデータが取れた」 目の前。 視線を合わせるように屈み込んでくる司は「ね」とデジカメを取り出した。 その画面に写ってるのは、その、もろ俺が漏らしてますっていう現場写真で。 無表情のままとんでもないバクダンを持ってきやがる司に俺は声にならない悲鳴を上げた。 「なっ、お、おい!なに撮ってんだよ!!」 「あくまでも個人用の資料だから大丈夫」 「なにが大丈夫なわけ?!全然大丈夫な要素見当たらねーけど?!」 「おい、時川」 青褪める俺を宥めるように肩にぽんと手を置いてくる店長は、そのまま司に目を向けた。 そうだ、たまには店長らしく店員の行き過ぎた行動を止めてもらわなければならないはずだ。 よし、バシッと言ってやれ! 「あとで俺にも回せよ」 まあなんとなく嫌な予感はしていたけど当たって欲しくなかった。少しでも信じた俺が馬鹿でした。 店長の言葉に「高いですよ」と笑う司。 「早速個人用資料漏洩してんじゃねーか!!」 閉店後の店内。 静まり返ったそこに、一晩俺の咽び泣く声が響き渡ることになった。 |