酔っぱらい原田vsシラフ笹山 むっつりだとか熟女キラーだとか言われる度に否定してきた俺だけど、これは一体どういうつもりなのでしょうか。 神様は俺を試そうとでもしているのでしょうか。 確かに、がっつく奴はみっともないと思うし同じ男として見てて恥ずかしいと思う。だからこそ自分はそうならないように必死に回避し、時には堪えてきたつもりだけれど、今度はどうだ。 完全に、俺を潰しに来ているようにしか思えない。 「…んん、笹山ぁ……」 ソファーに座る俺の上、更に膝にもたれかかってくるように座ってくる原田さんからは濃厚なアルコール臭が。 通常時よりも熱い体温が薄着越しに伝わってきて、正直、流石に、これはまずいんじゃないだろうかと危機感を覚えずにはいられなくて。 「原田さん、飲み過ぎですよ。そろそろ帰りましょう、送りますから」 「んん、やだぁ……もっと笹山と飲む…ぅ…」 呂律が回ってないし、とろんとした目には最早俺すら映っていない。 テーブルの上、ゆっくりとした動作で日本酒の入ったグラスを取ろうとする原田さん。 ああ、そんな覚束ない手で。と慌てて原田さんのグラスに手を伸ばした矢先、案の定原田さんはグラスを倒していた。 「ああっ、だ、大丈夫ですか?」 酒がかかった手を拭くために、「今拭きますので」と、予め用意していた布巾に手を伸ばしたとき。 無言で、テーブルにできた酒の水溜まりを眺めていた原田さんはいきなり俺の手を掴んできた。 熱い指にぎょっとしたとき、あろうことか俺の手をひっぱるようにして自分に寄せた原田さんは躊躇いなく濡れた俺の指に顔を近づける。 そして、 「んっ、ん…………」 ちゅ、と小さく音を立て指先に唇を押し当てた原田さんは指を咥えるように舌を這わせてきた。 予想だにしていなかった原田さんの行動に驚愕を通り越して硬直した。 それもすぐに、懸命に指についたアルコールを舐め取る原田さんの後ろ姿にハッとする。 「原田さん、なにを…っ、駄目ですよ、そんなことをしては…」 どれだけ酒が飲みたいんだ、と呆れるよりも、ぎこちない動きで指に絡み付いてくる暖かな舌の動きに頭の奥がぐずぐずになるのがわかった。 それでも、この人は酔うと可笑しくなるということを事前に知っている俺は酔っぱらい相手だ、と必死に我慢する。 そう、俺は他の人間とは違うんだ。このくらいで狼狽えてしまっては示しがつかない。 「原田さ……」 原田さんの唇から指を離そうとすれば、ぎゅうっと抱きつく腕に力を込める原田さんはそのまましがみつくように深く根本まで俺の指ごと咥えてしまった。 それだけでも俺にダメージを与えるというのに、原田さんはそのまま音を立てるように指を軽く吸い上げ、必死に舌を絡めてきた。 関節ごと、丹念にしゃぶりついてくる原田さんになけなしのなにかが雪崩ていくのが自分でもわかってしまった。 それと同時に、半開きになった原田さんの唇に指を捩じ込む。 「ん、ぅ……ッ!」 柔らかくて、暖かな唇の感触。 驚いたように目を丸くする原田さん。その小さな唇に二本目、三本目と指を捩じ込めば、口いっぱいに俺の指を頬張った原田さんは涙を滲ませ、こちらを見上げた。 「ひゃひゃ…やま?」 原田さんが喋る度に蠢く濡れた舌が指に触れ、心臓の脈が加速する。 落ち着け、早まるな、今ならまだ間に合う。 いくら酔っぱらいに絡まれたからといってこういうのはよくない。 そう自分に言い聞かせる。 けれど。 僅かに困惑の色を浮かべる原田さんがおずおずと指に舌を絡めてきたとき、そんな必死の自制も吹き飛んでしまう。 「っう、ん…ん……ッ」 ぬるぬるとした咥内。その中をまさぐるように、泳ぐ舌を掴まえた俺はそのままその舌を引っ張り出す。 強制的に舌を突き出すように口を開けた原田さんはわけがわからないようで。 テーブルの上の瓶を掴み、自分に寄せた俺は未だ不思議そうな原田さんに微笑んだ。 「そんなに飲みたいのなら構いませんよ」 好きなだけ飲んで下さいと、目を細めた俺は頭上に掲げた瓶を思いっきり傾けた。 |