司がデートに誘うようです

「原田さん、花火好き?」

「え?あ、うん、まぁ…好き」

「ああ、そう……」


って、それだけかよ。
自分から聞いてなんでそんなに興味なさげに答えるんだ。

無表情のやつに逆にこっちが突っ込みそうになったとき、司は「あのさ」と小さく唇を動かした。


「今夜、花火大会があるらしいんだけど」

「あぁ、なんかお客さんが言ってたな。司も見に行くのか?」

「…いや、俺は」

「だろうな、お前そういうの興味無さそうだし」


そう、笑い返したとき。
「だからさ、」と伸びてきた手に、肩を掴まれた。
真正面から顔を覗き込まれるような形になり、内心俺は驚く。


「…一緒に、見ない?」

「え?俺が?」

「…」

「……司と?」

「…」


無言で頷く司はどこかいつもと様子が違う。
いつもはどんなことがあっても涼しい顔してるのに、なんか……緊張しているみたいな。
そこまで気付いて、俺は司の意図を感じ取った俺はつられるように硬直した。


「もっ、もしかして、デートか?」


声に出して尋ねてみれば、僅かに司の顔がじわじわと赤くなっていく。
なんだその反応は。はいかいいえかくらい答えろよ。あ、やっぱいい。司がなにか言っても、多分、まともに答えられる自信ない。
つられて熱くなる顔を抑える。


「…デートに誘ってんだけど……いい?」

「えっ、よ…よくない…!」

「…ダメなのか?」


こころなしか、司の周囲の空気が暗くなった。
無表情の中にも表情はあるようで、落ち込む司にはっとした俺は慌てて首を横に振った。


「……よくないわけが、ない…って言いたかったんだ。……ごめん」


キョドる自分が恥ずかしくて、目を合わせないように俯向けば、目の前の司が一瞬笑ったような気がした。
慌てて顔を上げた時にはいつもの司がそこにいる。


「……よかった」


そう安堵の息を吐く司は、本当に嬉しそうで。
こっちまで嬉しくなると同時にむず痒くなって。


「じゃあ、今日バイト上がったらそのまま行くか」

「いや、一旦帰る。…準備もあるし」

「準備?準備ってなんの準備だ?」

「原田さんも準備、色々あるだろうし」

「……はっ!?お、お前セクハラかよ…!」

「…服のこと言ってんだけど。それは誘ってるってこと?」

「えっ、ふ…ッち、ちげーから!間違えたんだよ!お前が、いつも…っ」

「わかった、ちゃんと準備しとく」

「しなくていい!!」


おしまい


***


おまけ↓


店長「いやー遅かったな!場所取りはしておいたぞ!」

紀平「あ、かなたんそこでリンゴ飴売ってたよー。ほら、これかなたんの分の綿菓子ね。買っておいてあげたから。ちょっと欠けてるけど気にしないでいいから」

四川「…ったく、人多すぎだっての。どうせならもっと静かなところにしろよ。…ま、俺は多少の人目は気にしねえけどな」

笹山「さすが人が多いですねー。原田さん、逸れそうになったときはいつでも俺の服、引っ張ってくださいね」

翔太「カナちゃんなんで僕が用意していたミニスカ浴衣着てないの?!これみよがしにロッカーに入れてたのに!そこは『ばっ、誰がこんなの…っ!』とかいいつつ袖を通して、思いの外体にフィットした衣装に頬を赤めつつも『この浴衣、丈短過ぎないか…?』ってぐいぐい裾引っ張りながら登場するところでしょう!!!」

司「お前ら全員帰れ」

原田「司がキレた…!」


mokuji
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