【フリリク】ドキドキ☆夏の肝試し〜お漏らしもあるよ!〜D 「おい、笹山まだかよ。流石に遅すぎるんじゃねえの?」 「知るかよ。便所にでも言ってんじゃね?」 「いくらなんでも、黙っていくような奴じゃないだろ、笹山は…って、おい!」 言い終わるよりも先に、さっさと店内へと歩き出す四川にぎょっとした。 電気がついていないのに、っていうか笹山もまだなのに! 「待てって!おい!笹山がまだだろ!」 「これ以上待ってられっかよ。さっさと終わらせる」 「でっ、でも……」 「なら、お前だけあいつ待っとけばいいだろ」 素っ気無いものいいだが、四川の言葉も分かる。 でも、と俺は先ほどまで自分たちがいた場所を振り返る。 薄暗いそこで、いつ戻ってくるかもわからない笹山を一人待つ自分を想像したら、背筋が寒くなった。 いや、断じて一人が怖いわけではない。ただ、ほら、こう、あれだ。絵面的に…すみません怖いだけです。 「お前一人で行かせれるかよ!…おっ、俺も行く……!」 だけど、素直にそんなことを言えるわけがなく、結果いつもの調子で慌てて四川のあとをついていこうとしたとき。 ふと、足を止めたやつはこちらを振り返る。 そして、じっと俺を見た。 「な…なんだよ、文句あんのかよ…」 「いや、別に」 「別にって…」 「ただ、俺と一緒にいてえくらいビビってんのかと思ってな」 皮肉混じりに笑う四川に図星を刺され、かっと顔面が熱くなる。 「だ……誰がビビって……」 「てめえに決まってんだろ。顔、すげえことになってんの気付いてる?」 にやにやと笑う四川につられて、慌てて俺は顔を手で覆った。 更に四川は笑い出した。 「ほら、怖くないように手ぇ握ってやるよ」 一頻り爆笑し、ひいひいと肩を揺らす四川は言いながら俺に手を差し出した。 完全に、舐められてる。 今に始まったことではないが、図星だけに余計悔しくて。 うぐぐと歯を噛み締めた俺は四川を睨み、そして慌てて手を引っ込める。 「よ…余計なお世話だ…っ!別に怖くねえし……お前と一緒に来たくてきたわけじゃねえし」 「じゃあ一人で回れよ」 「ああ、そんくらい楽勝………………へ?」 「俺下の階見てくるからここ、頼んだぞ」 「は?え、あっ、ちょ、待てよ!おい!」 なんでそうなるんだ。 言うだけ言って、そのまま店の奥へと進む四川に慌てて声を掛けるが、あっと言う間にその後ろ姿は闇に埋もれる。 足音すら聞こえなくなった店内。 一人ぽつんと取り残された俺は、変に意地を張った数秒前の自分を殴りたくなった。泣きたい。 |