【フリリク】カナちゃんと笹山君E

笹山に連れられ、休憩室へと戻ってきた笹山と俺(ノーパン)。
「なにがあったか説明してください」と怖い顔した笹山に問い詰められ、しどろもどろとたまに噛みながらもひと通りの事情を伝えれば、大体を把握した笹山はこめかみを抑えた。


「…また、あの人ですか」

「ご…ごめんな、せっかく探してもらったのに」

「別にそんなことはいいんですよ、気にしなくても」


項垂れる俺に、苦笑しながら笹山は首を横に振る。
よかった、いつもの優しい笹山だ。
そうほっとしたのも束の間、笹山の目が細められる。


「…それより、俺が言っているのは何故ちゃんとここで待っててくれなかったことです」


トーンが落ちたその低い声には明らかな怒気が含まれていて。
やべえ、やっぱり怒ってる。
内心冷や汗を滲ませた俺が「だって、パンツ」と口籠ったとき。


「パンツくらい、俺がなんとかします。……そんなに俺のこと、信じれませんか?」


どうやら、笹山は俺が出ていったのが自分を信じれなかったのもあると思っているらしい。
悲しそうな顔をする笹山に慌てて俺は首を横に振った。


「ご、ごめん…そういうつもりじゃなかったんだ」

「いや…俺の方こそ、すみません。誰かが来た時のこと、ちゃんと考えてなかったんで」


「紀平さんに対する認識が足りませんでした」と、悔しそうに舌打ちをする笹山。
本当に心配してくれてるのだろう。
嬉しく思う反面、一瞬笹山の背後に黒いものが見えたような気がしたが気のせいだろう。そう思うことにしよう。


「そ、それで…あの、服は…」


いつまでもこの格好というのも締まらない。
短いスカートの裾を抑えつつ、もじもじと笹山に尋ねれば、「あぁ」と笹山は思い出したように声を上げた。
そして、にこりと微笑む。


「ありましたよ。少し、サイズが小さいかもしれませんが」

「なら、それを早くくれ」

「構いませんが、文句は言わないで下さいね。一番ましなのがこれだったんで」


やけに意味ありげな言葉だったが、今はこの格好をどうにかすることが最優先だ。
「わかった!言わない!」と力強く頷けば、安心したように息を吐いた笹山は持っていた衣類一式を俺に手渡した。


「では、どうぞ」


そう笑顔の笹山に見送られ、意気揚々と部屋の隅で着替える俺だったが、それも短い間のことだった。

mokuji
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