【フリリク】カナちゃんと笹山君D

紀平さんがどういう人かは概ね分かっている。
パンツを持ち去ったのも、罠だと。
だけど、やっぱり、パンツがないというだけで酷く不安になってしまい。
焦りと困惑で思考力が低下した俺はよろよろとスカートを抑えながら立ち上がり、そのまま休憩室を出た。

笹山に見つかったら怒られるだろう。
それでも、やはりなくてはならないものであるわけで。
笹山と鉢合わせになる前にパンツを取り戻し、
休憩室に戻ればなんとかなるだろう。

そう、思っていた。
思っていたが、現実はやっぱり俺にとって甘くはない。

人気のない通路を抜け、店内へと繋がる扉を開けば一気に辺りの空気が変わる。
人の声、ざわめく空気。
いつもと変わりなく色んな層のお客がいる中、全身の血の気が引いていく。

こんな中を歩き回って紀平さんを探し出すなんて、無理だ。
いや、それでもなんとか頑張ればどうにかなるかもしれない。
どきどきと高鳴る胸を抑えながら俺は一歩、また一歩と足を進める。
大丈夫、俺は空気だ、ノーパン女装なんて当たり前だ。
そう言い聞かせながら歩くが、やはり、無理だった。
客から逃げるように棚に隠れ、縮こまる。
見ちゃいないとわかっていても、誰かに見られてる気がしてならない。
気がつけば全身から嫌な汗が流れ、なんか多分俺は更にやばいことになってるだろう。
職質にでもあったら即アウトだ。
やっぱり、パンツは諦めよう。
そう断念し、そのまま踵を返したときだ。


「原田さん?!」

「っ!!」


いきなり肩を掴まれ、慌てて振り返ればそこには慌てた笹山がいた。
一瞬口から心臓が飛び出したかと思うほど驚く。


「なんでこんなところに…出ないようにと言ったじゃないですか!」


怒ったような、困ったような顔。
強い口調で叱られ、びくっと震えた俺はそのまま笹山を見上げ、そして、安心したのか全身の緊張が解ける。


「さっ、ささやまぁ……っ」


安心のあまり、縋りつくように俺は笹山に抱きついた。


「えっ、ちょ、どうしたんですか」

「パンツ…」


小声で呟く俺に、「パンツ?」と小首を傾げた笹山だったが、ふと腰に回した手がスカートに触れる。
そして、その下の異変に気付いたようだ。
ハッとした笹山に顔を押し付け、俺は呻いた。


「パンツ、取られた……っ」



mokuji
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