紀平辰夫の葛藤的添い寝

朝起きて、目を覚ましたら隣にはかなたんがいた。
胸に寄り添うようにしてすやすやと気持ちよさそうに寝息を立てるかなたんに一瞬ぎょっとしたが、そういや確か昨日なんか成り行きで部屋にあげたんだっけ。覚えてねー。
つか、なんか腕枕してるみたいになってるし。腕重い痛い。でも動かしたらかなたん起こしちゃいそうだし、まあ、もう少しこのままでいいかな。
なんて思いながらすこやかなかなたんの寝顔を眺めていると呑気な顔をして鼻ちょうちん膨らませるかなたんについ頬が弛み、捲れている布団をかけ直し、そして、ハッとする。
なんだ、なんだこのむず痒さは。
なんで俺がかなたんの安眠のために腕を痛め、挙句に寝顔一つでこころを満たされなければならないんだ。
無意識に癒されてる自分に寒気がして、青褪めた。
寝る時、べたべたされるのが鬱陶しくて堪らなくて、いつも相手が寝る前に部屋から追い出していたのに。
こんなの、俺じゃない。
にやける自分に自己嫌悪を覚え、そしてそう葛藤している間にもかなたんの枕をする自分に薄ら寒くなる。
えー、だって、こんなの、俺のキャラじゃないじゃん。こんな。
思うのに、そう一人で悩んでいる間でもすやすやと眠るかなたんの寝顔を見詰めていると、不思議とどうでも良くなってきた。
気持ち悪いなーなにこのほのぼのした空気、すっげー気持ち悪いなー。
なんて思いながら、そんな気持ち悪さすらかなたんの間抜けな寝顔が見れるのならたまにはいいかななんて思ってしまう自分が余計気持ち悪くなって。
これが末期というやつなのかな。
取り敢えず俺は目を閉じ、あとのことはまた起きた時に考えることにした。




「かなたんは好きだけど、かなたんが好きな俺が嫌いで堪らないんだよね。これが恋ってやつなの?」

mokuji
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