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〈"自己解決したようです"のゾロ視点〉




ちっちゃい手がおれの額をペタペタ触る

身長(…というか、座ってるから座高)の差があるためアルトは膝たちをしてペタペタと


その行為に驚いたっちゃ驚いたが、一番驚いたのは顔の近さ


人の頭一つ分ほどしかない距離にあいつの顔がある


「もし割れてたら死んじゃうよ!?」

「………………」

「大丈夫?大丈夫??」


ペタペタ、ペチペチ


泣きながら叩くアルトに逆らうことなくその行動を黙って見守る


………思ったんだけどよ、頭割れてると思ったら叩いちゃダメだろ

………まぁ、割れてねぇからいいんだけどよ


それにしてもよく泣くよなぁ


ボロボロボロボロ…身体中の水分なくなっちまうぞ


あ、昼間の痣あった

意外に肌日に焼けてるからそこまで目立たねぇな

…………いや、夜だからか?


でも頭の色はよくわかる…まぁ、白いし

それに、今この距離だし

鼻も目もよく見える


もちろん、その下にある口もふにふにしてそうで…















……………ん?


今、おれ……










「こんだけ元気なら大丈夫だよね!」

「………………」

「よかったよかった」


あはは、と笑うアルトの顔全体ではなく、声を発しているその部分を見る

そして自分の考えていた内容に激しく項垂れた

隣のアルトが心配そうに見てくるが…申し訳ないが構ってやれる余裕はない


…………今、おれ…なんて思った?

鼻見て、目を見て…そんで口見て……





おれ…"うまそうだ"って


思った



しかも、無意識に


顔を手で覆い隣のアルトを見ないように、そして見られないようにする


ヤバい、これはヤバい

無意識に"うまそう"はヤバいだろ


今はここで押しとどまったけど…いつかは





………あ゛ぁあ゛ぁぁぁああ!!ダメだダメだ!!

おれは恋だの何だのに心揺さぶられてる暇は…!








『なんだあんた、堅物だったのかよ!?』


「……………!」


ピタリと思考が止まった


頭の奥底から聞こえてきたムカつく声

そして浮かんでくるムカつく顔

何故このタイミングであいつとの会話を思い出したのかわからないが……とりあえずスッゲェムカつく


ゆっくりと顔を上げ、目の前のアルトの目を見つめるが、頭の中はあのでこっぱち野郎の言葉でいっぱいだ


……おれはあいつと違う、おれは世界最強の座しかいらねぇ、アルトはただの仲間…


脳内にこだまする笑い声(だぁぁあ!鬱陶しい!)

そんななかおれは必死に否定し続けていたが




『おれは男だし?欲しいもんはぜぇーんぶ手に入れる』


また止まった否定の言葉


『両方欲しいのに片方しかダメ、とか考えられねぇよ』

『世界一を手に入れたあと、それで満足できるわけがねぇ』






『人間なんだから欲深くていいだろうが』










…………はぁ、


「なんかあるなら言ってくれないとどうしようもできないよ!頭が痛いなら痛い、悩みがあるなら悩みがある、って!言ってさえくれれこっちだって対処…」

「アルト」


悔しい

あんなアホに気づかされるっつーのは


でも実際はもうわかってた

簡単に我慢できる気持ちなんかじゃねぇってことぐらい


「諦めるわ、おれ」

「……へ?」

「もういいさ、認める」


認めて、どっちも手にいれてやる

なんたっておれ未来の大剣豪なんだ


欲しいものが一つ増えるくらい、どうってことねぇだろ?


わけがわからずきょとんとするアルトの頭を軽く叩いてやった


おれだって人間で、そして男だ

欲しいもんは全部手にいれてやらぁ


『いつまでも自分の気持ち押さえ込んでる野郎になんか負けねぇよ、ブワァーカ』


ハッ!残念だったな

おれだっててめぇみてぇな野郎にゃ負けねぇよ、ブワァーカ





自分の本心+でこっぱちの言葉

=もう我慢はしねぇ



(あー、スッキリした)(……でも、)(勝負はこっからだな)


(でこっぱち、)(てめぇにゃどっちもやらねぇぜ?)