Little Fish
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[mokuji]
黒子が姿を消して5ヶ月。
黒子テツヤは最大限気を使ってキセキの誰とも顔を合わせることなく過ごしていた。
彼自身、キセキの世代と呼ばれるかつてのチームメイト達を避けていたし、元より陰の薄い彼を見つけるのは至難の技である。またキセキ達もわざわざ黒子を捜すようなことをしなかった。
先に手を離したのは黒子の方だが、彼らもまたそれを当然のことと受け入れていた。
部活の仲間として、濃縮された月日を共に過ごしたというのに、実にあっけない最後だ。
全てを捧げるように打ち込んだ“バスケ”という絆さえ消えてしまえば、あっという間にちりじりになってしまう。
二度と還ることのない日々の破片が黒子の胸をつきりと刺した。
そんな黒子にとって、受験という強制的に思考をシフトしてくれるイベントはある意味幸せな期間だった。
キセキの面々とは違い、推薦ではなく一般入試を受けるため、入試の日まで勉強を重ねばならない。
キセキ達がいない新設校に行くため、高校では違うバスケをするため、ひたすら机に向かう毎日だ。
マーカーだらけのテキストから三年間分の知識を無理矢理詰めこみ、パンクしそうな頭は反比例してバスケ部への未練を消し去っていた。
一月末には授業がおわり、もうすぐ自由登校が始まる。
黒子は最後に、とよく利用した図書室へ向かった。
図書室の奥、ひっそりとした閲覧スペースのいつもの席へ向かう。
ここももう訪れることはないだろう。
長い間お世話になった図書室をくるりと見回していると、ふと、一冊の本が目に留まった。
年季の入った文庫本はいつもこの席で、何度も読み返した本だ。
ここでの思い出が一気に脳裏をかけ巡り、郷愁が募る。
ぱらぱらとページをめくっていると、巻末二貸し出しカードが入っていることに気がついた。
一度も使ったことの無かったカードは十数年前で記録が止まっていた。
ただ、その下にどこかの誰かを彷彿とさせるオレンジ色のボールペンで、『来年も一緒に』と書かれていた。
誰がいつ書いたものかわからない。
それでも、妙に彼の姿がちらついて仕方がなかった。
黒子はペンを取りだし、カードの下に一言書き足し、元のようにカードを本に挟むとテーブルに置き去りにして扉を閉めた。
1月の冷たい空気だけが心の中を満たしていた。
黒子テツヤは最大限気を使ってキセキの誰とも顔を合わせることなく過ごしていた。
彼自身、キセキの世代と呼ばれるかつてのチームメイト達を避けていたし、元より陰の薄い彼を見つけるのは至難の技である。またキセキ達もわざわざ黒子を捜すようなことをしなかった。
先に手を離したのは黒子の方だが、彼らもまたそれを当然のことと受け入れていた。
部活の仲間として、濃縮された月日を共に過ごしたというのに、実にあっけない最後だ。
全てを捧げるように打ち込んだ“バスケ”という絆さえ消えてしまえば、あっという間にちりじりになってしまう。
二度と還ることのない日々の破片が黒子の胸をつきりと刺した。
そんな黒子にとって、受験という強制的に思考をシフトしてくれるイベントはある意味幸せな期間だった。
キセキの面々とは違い、推薦ではなく一般入試を受けるため、入試の日まで勉強を重ねばならない。
キセキ達がいない新設校に行くため、高校では違うバスケをするため、ひたすら机に向かう毎日だ。
マーカーだらけのテキストから三年間分の知識を無理矢理詰めこみ、パンクしそうな頭は反比例してバスケ部への未練を消し去っていた。
一月末には授業がおわり、もうすぐ自由登校が始まる。
黒子は最後に、とよく利用した図書室へ向かった。
図書室の奥、ひっそりとした閲覧スペースのいつもの席へ向かう。
ここももう訪れることはないだろう。
長い間お世話になった図書室をくるりと見回していると、ふと、一冊の本が目に留まった。
年季の入った文庫本はいつもこの席で、何度も読み返した本だ。
ここでの思い出が一気に脳裏をかけ巡り、郷愁が募る。
ぱらぱらとページをめくっていると、巻末二貸し出しカードが入っていることに気がついた。
一度も使ったことの無かったカードは十数年前で記録が止まっていた。
ただ、その下にどこかの誰かを彷彿とさせるオレンジ色のボールペンで、『来年も一緒に』と書かれていた。
誰がいつ書いたものかわからない。
それでも、妙に彼の姿がちらついて仕方がなかった。
黒子はペンを取りだし、カードの下に一言書き足し、元のようにカードを本に挟むとテーブルに置き去りにして扉を閉めた。
1月の冷たい空気だけが心の中を満たしていた。
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