03「や!これ文がやるの!」


それから、食堂にきた、おばちゃん、伊作、くの一たちに、
『手伝おうか?』
とか
『やってあげる』
と言われましたが、その度に猫の文次郎は、

「へーき。これ文がやるの!」


と言いました。

かき回し続けたせいで腕や手が痛いです。
しかし辛くなる度に猫の留三郎が美味しそうにおまんじゅうを食べてくれる姿を想像して我慢しました。

その後、自分であんこを包んで、まるめて、ついにおまんじゅうが出来上がりました。

猫の文次郎はずっと付き合ってくれた長次にお礼を言って猫の留三郎のもとへ急ぎました。

「とめぇー!」
「あっ、もんにろー!」
「あのねっ、これっもんがつくったの!」
「まんじゅう?すごーい!」

さっそくおまんじゅうを食べた猫の留三郎。
猫の文次郎は少し緊張します。
するとおまんじゅうにかぶりついたまま、猫の留三郎は手でピースを作って、

「うみゃい!」



と言いました。

「ほんと!?」
「うん!もんにろー、ありがとっ」

猫の文次郎はニコニコしていましたが、あることを思い出しました。

「と、とめ?」
「ん?」
「えっとね、あのね」

ずっとずっと言おうと温めていた言葉。

「とめ、大好き!」
「!」

驚いた猫の留三郎はおまんじゅうを落としかけました。

「嬉しい!とめももんにろー大大大好き!」


その一部始終を見ていた人間の文次郎と留三郎は、

「そっか。今日は南蛮でいうバレンタインだったな」
「またまたー。そんなこと言って本当は俺への愛のプレゼントがあるんだろ?」
「は?」
「え?」


そのあと、人間の留三郎の泣き声が6年長屋に響き渡りましたとさ。




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