「じゃ、明日の朝七時にここね!」
「ねえ、やっぱり早くない?」
「何甘いこと言ってるの、名前ちゃん!いつ来るか分からないのよ!?」
「(そこまで早く来ない気がするけど…まあいっか)はぁい」
「まったく、気の抜けた返事をして。そんなんじゃ、またシスターに注意されるわよ?」
「あはは、そうかも」

じゃあ、また明日、とレイちゃんと手を振って別れる。
うーん、明日、何時に起きたらいいかな。

遅咲きの桜が咲く四月。私は、T.A女子学園の高等部に上がった。転入する時の不安はどこへやら、毎日、楽しく過ごせている。
それもこれも、入って直ぐに仲良くなった、火野レイちゃんのお陰。

レイちゃんは、面倒見が良くて、自分の意見をしっかりと持っている、ハキハキとした話し方をする女の子。同じクラスに入ってきた私に、いち早く声をかけてくれた。そこから、仲良くなるのに時間はかからなかった。
これについては、私たちは、あまり似ていないのに、どこか通じるものがあったからかもね、と終業式の後、レイちゃんと話した。私が感じていたことをレイちゃんも感じてくれていたみたいで、とっても嬉しかった。

これは、レイちゃんにも言っていないことだけれど、レイちゃんと一緒に初めて帰った日、横を歩くレイちゃんの、夕日に照らされた横顔を見て、「あ、この子だ」と思った。
転入してきた日の朝に、ふわりと感じた、カサブランカの香り。あれは、きっと、レイちゃんだったんだ、って。
レイちゃんから実際にカサブランカの香りがしたわけじゃないから、そう思うのも、変な話だけれど。
でもきっと、レイちゃんは私にとって、大切な人なんだって、その感覚が教えてくれている気がした。

「あ、そうだ。牛乳買わなくちゃ」

一人きりの家路も、誰もアポなしで訪れることのない家にも、もう大分慣れてしまった。

「今頃、元気にしてるかな、二人とも」
新しい日常

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