「……奥の不思議な扉の前には白い何かが付いて汚れてる浴衣があって、」
「うん」
「でも、調べようとしたらキョウダさんが来ちゃって詳しくは……」
「えーと、捺?」
「なに?」






せめて話してる時はこっち向いてくれない?ころり、と何処か可愛らしさを含んだ素直な言葉にびくりと肩が揺れる。私の目の前には押し入れがあり、彼の声は背中側から聞こえているけれど、だって、こんなの仕方ないじゃないか。流石に僕寂しいんだけど、と不満そうな声色で訴えかけてくる五条くんはやっぱり部屋に戻った時から明らかに元気になっている。さっきまでのあんなに私を心配してくれていた態度は何処へやら、仲良く並べられた布団にニンマリとした顔を隠す事なく「じゃあ寝よっか?」とハートマークを語尾に散らすように私に笑いかけたのだ。




初めは、あくまでカップルのフリなんだから離して寝よう、と言おうと思った。けれど、彼があまりに嬉しそうな顔を浮かべながら少し裾の足りない浴衣でそこに踏み入れ、掛け布団を捲って収まるのを見ると如何にも断れなかった。ぽんぽん、と手を伸ばし隣の布団に触れて柔らかい声で私の名前を呼ぶ仕草に根負けしてしまったのだ。嫌なら拒否しないといけない、勿論わかっている、わかっているけれど、私も"嫌“と言うほど嫌なわけではないのが現実なのだ。だって彼は大切な私の10年来の同級生で、悪い人ではない。寧ろ私は彼を尊敬しているくらいだ。……嫌いになんてなれるはずがない。嫌がれるわけが無い。


それに、と思い出すのはいつか彼の家に泊まったあの日のことだ。酷く悲しそうに、願うように私に手を差し出した彼の表情は今でもずっと忘れられない。あの時は分からなかったけれど、今は少しだけ、分かる気がする。彼はきっと怖がっていた。大切な人に拒絶される事を恐れていた。それは私も同じで、交流会の時、彼に止められたあの瞬間の絶望感は想像を絶するものだった。五条くんなりの心配だったと冷静な今なら直ぐに分かるのに、目の前が真っ暗に閉ざされてしまったような気がしてしまったのだ。……彼の感情と私の感情には少し差異があるけれど、相手に受け入れてほしいと思う気持ちを跳ね除けられるかもしれない不安、という点では遠くはないと思っている。



……そういう理屈で言うならば、確かに私は彼の家に泊まった時は彼のベッドで寝たけれど!あの時はやっぱり何も分かっていなかったし、私だってこんなに五条くんのことを考えていなかった。ひどい、話だとは思うけれど、私にとって彼は、いつまでも手が届かないところにある、まさに空に散らばる星の一つだった。だからまさか、彼に、そんな風に思われているなんて想像すらもしていなかった。……正直、いまでも、勘違いじゃないかと思っているくらいだ。





「捺、聞いてる?」
「……っえ、」
「また考え込んでたでしょ。ほら、こっち向いて」





ね?と小さい子に言うみたいな声で彼は言った。とんとん、と布団の隙間から見える畳をノックする五条くんにおそるおそる、本当に少しずつ、ゆっくりと体を彼の方に向ける。彼は、ただそこに横になっていた。特に変わった事をしているわけでもなく、距離を詰めるわけでもなく、自分の布団のちょうど真ん中あたりに寝転がり、私の方を向いているだけだった。少し拍子抜けしてしまった私に目を細めてくすり、と笑う彼は大丈夫、と呟いた。何が大丈夫なのかは分からないけれど、それは不思議と固くなっていた体の力を抜かせるのに丁度いい声色だった。さっきの続きは?と促すように問いかける声につられて、キョウダさんの様子が可笑しかったことを伝えると彼は興味深そうに頷きながら聞いてくれた。話し終えた頃には肩の重さが少し楽になったような気がする。もしかしたら無意識のうちにキョウダさんの怪しさは私にとってストレスだったのかもしれないな、と思いながら「五条くんは?」と反対に私が尋ねた。枕にふわりと髪を広げつつ、うん、と一拍置いた彼は順に思い出すかのように話し始める。




彼はやっぱり私より早くに上がっていたらしい。コーヒー牛乳を探す目的で辺りをふらついていると小さな待合室には同じく彼女待ちの彼氏達が座っていた。コーヒー牛乳やフルーツ牛乳置き場は古き良き100円玉を入れて貰っていくようなシステムらしく、時間を潰す目的で、それぞれが瓶を片手に男性達は休憩していたようだ。五条くんは誰か適当に声をかけて話を聞こうかとも思っていたけれど、それより先に廊下を女将であるサラギさんが歩いていくのが見えた。




「で、話してみて分かったんだけど」
「うん」
「あの人、多分そんなに男に興味ないんじゃないかな」
「……うん?」




神妙そうな顔で真面目にそんな事を言促す五条くんに若干面食らった。それは……あまり相手にされなかったから、という事なのだろうか?確かに五条くんはカッコいいしモテるけど……だからといってそれで決めつけるのはどうなんだろうか、なんて、私が微妙な顔をしているのが分かったのか彼はいやいや、と少し笑いながら否定する。どうやら一応そういうことでは無かったらしい。




「僕を含めた他の彼氏とか男性陣への態度と女の子への接し方の雰囲気が全然違うんだよね。ここから導き出されるのは女将さんが無類の女好きの可能性と……」
「……目的が女性だけに絞られてる?」
「ご名答」




流石に前者は苦しいと仮定しても、この旅館の目的が"女性"に絞られている……ということになるけれど、いったいどんな目的なんだろうか?男性ではダメで、女性になら可能なの事なんて限られてくるけれど……そもそも彼らが人間かどうかすらも正直分からない。今回のツアーは何のために組まれたツアーなのだろう。女性に目的がある、というのは赤綱縁結びに関係しているのだろうか。疑問は中々尽きそうにない。この辺りも明日の儀式までには調べておきたいけれど……





「最近は男女平等が当たり前だしねぇ……ここの旅館の人達が古い価値観を持っているのか。もしくは、」





と、そこまで言って五条くんは不意に言葉を止める。彼は何度か瞬きしてから自分の後ろにある壁にじっと目を向けた。まさか何かに監視でもされている?それとも盗聴?嫌な想像がすぐさま頭に駆け巡り、布団からいつでも離れられるように構えたけれど、五条くんは暫くしてからもう一度私の方に向き直った。しかし、その顔は想像していたような緊迫したものではない。寧ろ、何だかニヤニヤと楽しそうにすら感じる。五条くん?とそっと名前を呼んで伺う私に対し、人差し指を自らの口の前に立ててシーっ、と示す彼に首を傾げつつ取り敢えず頷いて黙り込んだ。…………何か聞こえる?


夜が深まりしん、と静かな旅館の筈なのに、微かに聞こえる高い何かの鳴き声のようなものを私の耳は捉えている。初めは音の出所が分からなかったけれど、段々と集中力が高まっているのか徐々にそれがさっき五条くんが向いていた壁の奥……アカリさんが泊まっている部屋の方からだと気付いた。まさか彼女の身に何かが?嫌な想像が過って思わず立ち上がろうとしたけれど、それを察した彼は私の腕を取り、ぐいっと自分の方に引き寄せた。中途半端な体勢だったからこそ、簡単に崩れてしまった私が顔を上げると、目の前には窓から溢れた月明かりでキラキラと照らされた五条くんがドアップで映し出され、思わず叫びそうになってしまった。悲鳴を上げる直前に慌てて彼の手で塞がれた口と「流石にアレは邪魔しちゃダメでしょ」と少し眉を下げて言われた言葉に混乱する。アレ、って、何のことを……




「……あぁ、ッ、あっ……!」





びく、と肩が跳ねた。今の、は?固まった体と停止した思考で、五条くんを見つめた。彼も少し視線を横に向けて隣からの音を聞いてから「……随分お盛んみたいだね」と呟く。彼が指したお盛んの意味が分からないほど私は純粋ではない。でも、じゃあ、さっきから聞こえている動物の声みたいなものはもしかして……と、答えに辿り着いた瞬間、一気に燃えるように顔が熱くなる。そうだ、今はカップル限定ツアーだし、旅館に2人で泊まる夜なんて少し考えればその可能性がある事ぐらい分かるじゃないか。言葉を失った私の口からそっと手を離した彼は、まぁ、これの延長線上も女の子じゃないとダメなことだね、と戯けるように笑う。それは、その、出産、ということだろうか。確かに多様性の世の中だとしても今のところ人間である限り、出産は女性にしか出来ないことだとは思う、けど、





「そういう可能性も一応警戒したほうがいいかもね」
「……ん、ぅぅ……ぁああ……!」
「だからアイツも捺にばっか接触してきてるのかもしれないし……」
「……あっ、あっ、あぁッ!」
「僕も見とくけど捺もちゃんと気をつけて」





五条くんが何か言っているけれど、全然頭に入ってこない。正に知らなければいいことに気付いてしまった、とはこの事なのだろうか。どうしても、凄く大きい訳でもない"その声"に自然と意識が向けられてしまう。彼が話している合間にも多分、アカリさんのものであろう声が聞こえる。自然と温泉であった元気な彼女の姿が頭に浮かんでは悶々とそれが離れていかないのだ。捺?と私を案じるような声にどうにか五条くんの話に集中しようとするけれど、やっぱり耳は私の意思に関係なく、音として隣で行われている行為を鮮明に伝えてくる。




「やっぱり気になる?」
「だ、だってこんなの……!」




あまりの恥ずかしさに震えて声が裏返りそうになった。寧ろ五条くんがこんなに平然としている方が私は不思議で堪らない。知らない人だしねぇ、とあっけらかんとしている彼はやっぱり色々図太すぎる気がする。それに、私にとって声の主は決して知らない人ではないのだ、ということを主張すると彼はそうなの?ときょとんと少し目を丸くしていた。





「さっき温泉で話して、部屋が隣だって言ってたから名前も顔も知ってるし……」
「へぇ、凄い偶然だね。何の話してたの?」
「なんの、って、」





貴方の、とは言えなかった。実際彼女と話していたのはこの旅行に関する一般的な内容を少しと、大半は五条くんのことだ。でも今その事を言うと……そんな不安に駆られて不自然な沈黙が流れる。けれど、それはそれで更に隣からの物音を意識してしまう気がするし、もうどうしていいか分からない。一向に気が休まるとは思えない居心地の悪さに少し視線を落とした、その時。黙り込んでいた彼が突然自分の布団を捲り上げたと思うと、隣にいる私諸共覆いこんでしまったのだ。先程までは距離は近付いたとはいえ、布団の中にまでは収められていなかったのに、これでは完全に捕らえられてしまったようなものだ。バクバクと更に心臓が速く動き始め、本能的に逃げようと体が引いたけれど、それを許すほど五条くんは甘くない。すぐに腕を背中に回して動きを阻止した彼はそのまま私を強く、強く、抱き込んだ。きゅ、と潰されるような感覚に息が詰まり、抵抗しようとした。でも、それより先に彼の胸板に顔を押し付けられて、そこから聞こえる私のよりも断然速く脈打つ鼓動に、緊張で固めた筋肉から力が抜けていくのを感じた。五条くんは何も言わない。ただ私に、そうして自身の心音を聞かせるだけだ。どくどくどくどく……明らかに頻脈気味のそれについ「はやい……」と独り言のようにぼやいた私に五条くんは少しだけぶっきらぼうに「そりゃそうでしょ」と吐き出した。






「好きなヤツとこうしてて、緊張しない訳ないだろ」
「……!!」





好きなヤツ、と評されたそれに今度こそ本当に呼吸が止まりそうだった。彼の声は真剣だ。私を揶揄っている訳ではない事なんて、確認しなくても分かる。こうしている間にも五条くんの心臓の音は確かに私に音として、振動として、響くように伝わってきた。五条くんは隣からの声に動揺も無く、何でもない顔をしているように見えていたのに、そんな私の想いが伝わったかのように彼は少し自嘲気味に笑って見せた。






「僕は捺と並んで寝るって分かった時からそれなりドキドキしてたんだけど?」
「う、嘘……」
「ホント。寧ろ隣がヤッてんの気付いてからのが馬鹿みたいで逆に気抜けたし」
「……それは、色々おかしいと思う、けど」






ストレートだな、とクツクツ喉を鳴らす彼の仕草と心音は釣り合いが取れていない。不思議な感覚だ。まるで嘘発見器のようなソレに未だ現実味が湧かないが、わざと出来るようなものでは無いことぐらいはすぐに分かる。私も相当緊張していたけれど、彼も同じくらいに、もしかしたらそれ以上に緊張していたのだろうか。……分かり辛いよ、と本心から溢れた言葉にごめんって、と穏やかに返しながら「そろそろ落ち着いたかな」と抱き締めた力を少し緩めたことで、彼と目が合った。白っぽく発光する柔らかい青は様々な想いをそこに乗せている。その全てを紐解くことは今の私には出来ないけれど、でも、私の目には、何だか少しだけ寂しそうに映った。あの日見た顔と同じ、そんな色が透けて見えた。



……そこに何か理屈は無かったんだと思う。私を解放しようとした彼から離れないように、わたしは彼の背に腕を回した。さっき五条くんがそうしたように、出来るだけ強く、強く。「……ッ!」と息を呑んでから、ゆっくりと、本当に少しずつ、もう一度彼の腕が私の背中に回された。……いいの?と確認をとるその声はいつもの自信溢れた彼とは違い、弱々しいものだった。いいよ、と似たような言葉で彼を肯定すれば、五条くんは私の肩口にぐりぐり、と自分の顔を埋めて、大きく深呼吸をした。




はぁぁ……と深く吐き出された息を思わずくすり、と笑う。笑うなよ、と拗ねたような口調が何だか可愛らしくて、ごめんね、と謝りながら白くて少し硬い髪に指を通した。私の何倍もの大きさがある男の人なのに、こんな風に縋る姿は大型犬……ゴールデンレトリバーみたいな愛らしさと素直さが垣間見える。何だか母性に近しいものを感じつつ、今なら言えるかな、と私も口を開いた。





「隣の部屋の子とね、五条くんの話をしてたの」
「……おれの?」
「そう、かっこいい彼氏ですねって……他の宿泊客の子達も見てたって教えて貰った」
「…………捺は、どうなの」





え?と生返事した私に五条くんはもっとぐりぐりと擦り付きながら、俺のこと、どう思うの、と尋ねてきた。五条くんをどう思うか、というのは私にとって中々の難問だ。うーん、と悩みながら彼を表すのに一番いい言葉を探したけれど、これがまた難しい。少し考えた結果、色々あるよ?とそれでもいいのか許可を取るように聞けばコクリと彼は首を縦に振った。





「その子が言うみたいにかっこいいなって思うし、一番綺麗だなって昔から思ってるよ」
「……うん」
「あとは優しいし、色々私のこと気にしてくれてるし……尊敬してる。昔からずっと」
「…………」
「……今は正直、ちょっと可愛いなって思ってるかな?」





……それは今この瞬間だろ、と最後の答えに少し不満そうに訴えかけてきた彼だったけど、それ以外に関しては文句は言われなかった。他に関しては納得のいく答えだった、ということだろうか?ふふ、と溢れた笑みを聞いた五条くんはぐ、と腕に力を込める。これは不満だと言いたいのだろうか。でも、彼から伝わってくる体温の何とも言えない心地よさに少しずつ思考が削れていく気がする。こんなにひんやりとした神秘的な色合いの彼なのに、しっかり心臓は動いていて、肌からは確かな温度が感じられるのは彼を人間だと感じさせてくれた。ごじょうくん、と呼んだ彼の名前がふわふわとした調子を孕んでいて、自然と私も彼に自らの顔を埋める。鼻腔をくすぐる心地の良いじっとりと眠気に襲われる匂いはきっと、






「……ごじょうくんの匂い、すき」
「ッ〜……!!お前、なぁ……」






語気の強いその声に、深い海の底から引き上げられるような感覚がして、思わず、はっ、とする。今私は何を……!?と自分の言動を思い返す間も無く、ぐ、ぐ、も少しずつ私を抱きしめている彼は確かに体重を掛け、その大きな体を私の方へと倒し始める。横を向き、向かい合っていたはずなのにいつしかもうすぐ私の背中が布団についてしまいそうな角度にまで傾いてしまっている。ご、五条くん……!と顔を上げて彼を見たけれど、口角をひくつかせて何かをグッ、と堪えるような苛立ちにも似た表情で私をほとんど見下ろしていた。





「……お前さ、俺を煽ってる自覚あんの?」
「煽っ……!?そ、そんなつもりは……!!」
「無いって?そっちのがタチ悪ぃわ」





ギラついた瞳は最早ゴールデンレトリバーなんて可愛いものじゃない。狼か何かのような肉食獣らしき光にキュッ、と心臓が鷲掴みにされている。彼は強者だ。あんな様子だったとしても、常に私なんか噛み切ることができるような圧倒的にヒエラルキーの一番高い位置に立つ、雄なんだ。"食べられる"そんな本能的な恐怖に体が動かなくなり、こうしてる間にもどんどん組み敷かれ始めていて、脳裏に浮かんだビジョンは隣の彼女らと同じようになる、そんな私達の、





「抱かねぇよ」





バッサリ、と斬り捨ててそれを否定するように五条くんは言った。ぐらりと瞳を揺らした私に「お前が良いって言うまで、しないって決めてる」と、当たり前のように言い放つ彼にごくり、と唾を呑み込んだ。真っ直ぐとした瞳で見つめるそこに嘘はない。が、する、と私の背筋をなぞるように動かされた指先と、首に唇を寄せられて感じた熱く溢れる彼の吐息にもまた、嘘は感じられないのだ。さっきまでの彼の比ではないくらいに心臓が暴れて飛び出してしまいそうになる。体全体をピッタリと私に密着させ、足を絡め、限界まで私に近づいた五条くんとほぼ同時に、すっかり頭から抜けて忘れていた隣の部屋の彼女が一際鼻に抜けるような高い声を上げたのが聞こえた。私も彼もお互いとの触れ合いで忘れていたそれを知覚して、一瞬、揃って壁に目を向けたけれど、彼は直ぐに私の耳元で「……イッたな」とたっぷりの色を乗せた低い掠れ声で囁いた。ゾクゾク、と何かが這い上がるような感覚に体が跳ねて、五条くんはお前じゃねぇよ、と笑う。伸ばされた手が私の耳の縁に触れ、そのまま頬へと下り、最後に唇を親指で弾力を確かめるように押し込んだ彼は言った。







「……言った通り、このまま抱きはしねぇけど、」
「……っ」
「抱きたくは、なる」







紛れもない本心を吐露した五条くんはゾクリとするほど綺麗で、艶かしくて、野生的だ。ジリジリと迫るような色気と情熱を携えた青い瞳、少し着崩れて見える細身なのに筋肉質な体、どれもが男性的な魅力をとめどなく放っている。彼に、支配されたい、思わずそんな想いを抱いてしまうような底知れない色気と官能的な雰囲気に、私はぐったりと力が抜けきってしまった。ずん、と無意識に重くなった腰と擦り合わせた膝がはしたないような、どうしようもない気持ちにさせる。分かった?と聞き返してきた彼に弱々しくこくり、と頷くと「なら良い」なんて言いながら五条くんは包み込むように私を抱きしめて、また顔を埋め始める。私はもうそれどころではなくて、抱えきれない情報に押し潰されそうになりながら朝を待つことしか出来なかった。





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