きみがそこにいる幸福


「お邪魔しまーす。」

そう言って私は中に入った。ここは真ちゃんの家。真ちゃんに勉強を教えてもらうことになった私は、参考書がたくさんあるという理由で、真ちゃんの家で勉強会を開こうと提案した。真ちゃんは最初しぶったが最終的には私の意見を採用してくれた。なんやかんや言って真ちゃんは優しい。
というわけで、私は今真ちゃんの家に来ている

…え?やましい気持ち?
そんなものないない。だってこれは勉強会だもの。久々に真ちゃんの家の匂いをかいでテンションは凄くあがっているけども、やましい気持ちなんてない。今日は親御さんがいないと聞いて、2人っきりの空間であんなことやこんなことをされないかなとか思うけども。

「名字、先に部屋に行っておけ。飲み物は茶でいいか。」

「えっ、真ちゃんが飲み物入れてくれるなんて嘘でしょ天変地「…名字。」なーんてねごめんってば拳振りかざさないで!」

怒気を孕んだ声で拳を握り締める真ちゃんを、私はなんとかなだめる。いや、だって、真ちゃん普段あんなに女王様なのにお茶入れてくれるとか一体何事、って感じになるでしょ。

「…言っておくが、部屋で変なことをしていたらすぐに追い出すからな。」

「まっさかあ、しないよ。」

多分。
真ちゃんの自室の場所は知っているので、ささっと階段をのぼって部屋に入る。うおおおおお真ちゃんの部屋だ!真ちゃんの部屋!
最後に入ったのは確か中学1年の時だ。やばい懐かしい。あの時は同じクラスで、ここで一緒に文化祭の準備をした。そんなもの必要ないと言い張る真ちゃんを押し切って行ったのだけど、あれからもう4年か。時の経つのは早い。あの頃の真ちゃんはただの地上に舞い降りた天使だった。可愛かった。

「おい、なんて顔をしているのだよ。」

「…あっ、真ちゃん。」

「放心状態だったぞ。」

いけないいけない。どうやら昔のことを考えてぼんやりしていたようだ。
部屋の中央にある小さな机のそばに腰をおろし、私はカバンから教科書や問題集を出す。いつもはふざけているが、今日は本気で勉強をするつもりでここに来ている。欠点をとると部活に参加できない理由は、補習があるからだそうだ。毎日部活(中の真ちゃんを見ること)を楽しみに学校に来ている私にとって、部活に参加できないというのは拷問に等しかった。絶対に欠点は回避しなければならない。

「よろしくお願いします緑間先生。」

「…とりあえず英語からだ。まず問題集から解いてみろ。」

真ちゃんに促され私は英語の問題集を開く。高校一発目のテストということもあり最初のページは中学の復習だった。この問題集は提出物でもあるので、直接問題を解いて書き込んでいく。そんな私の手元を真ちゃんは向かい側からのぞき込む。やだ照れる。

「小テストで酷い点数をとった割には、そこそこ解けているな。」

「あれは高校の範囲だったからねー。中学の範囲は受験で頑張ったからまだ出来るよ。」

「ならば高校の範囲も頑張るのだよ。」

「はーい。」

「なにか分からないところがあったら聞け。」

そう言って真ちゃんは自分の問題集を開き、解き始めた。
今まで、真ちゃんに教えてもらうことはあったが、こんなふうに勉強会はなかった。しかも真ちゃんち。
ふふふ青春みたいでいいなこういうの。


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