聞こえているでしょSOS


ビーーーーーーーッ!!

「あっ……。」

試合終了の笛がなる。
その瞬間、秀徳高校の夏が終わった。


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秀徳の敗戦から1週間。もう皆、ウインターカップに向けて気持ちの切り替えが出来てきている。真ちゃんもウインターカップまでに自分のするべきことを見つけたみたいだ。
私は、今まで以上に選手を支えようと決心した。

しかし、そういうことを決めた時に限って、邪魔事というものはやってくるわけで


「明日からはテスト一週間前だ。欠点を取った者は部活に参加できないので、各自しっかり勉強するように。」


ミーティングの最後に発せられた大坪主将のこの言葉を聞いて、私は思わず頭を抱えた。…なんてこったい。

今日はテスト前最後の居残り練だ。なので皆気合を入れて練習している。しかし私はそれどころではない。
悶々としているうちに体育館を閉める時間が近づいてくる。残って練習をしていた人たちは、片付けをして更衣室に向かっていった。私は咄嗟に走って真ちゃんのもとに行き、その腕を掴む。

「真ちゃん、」

「断る。」

「なにも言ってないのに!?」

「そういう顔で話しかけられた時には大抵ろくなことが起こらない。」

「やだそれってお前のことは顔を見るだけですべて分かるのだよってこと?まるで熟年夫婦じゃんよっしゃ結婚しよう。」

「じゃあな。」

「あー!うそうそ冗談行かないで!」

そう言って私は真ちゃんを必死で引き止める。ここで真ちゃんを離すわけにはいかないのだ。

「仕方ないから話だけ聞いてやる。」

「…勉強を教えてください。確実に欠点とる。」

恐る恐るそう言えば真ちゃんは心底軽蔑した目で見てきた。つ、冷たい目をした真ちゃんも素敵…!とか言ってる場合じゃない本当に深刻な問題なのだから。欠点のせいで部活に参加できないとか嫌すぎる。それだけは避けたい。
はあ、とひとつため息をついた後、真ちゃんは口を開いた。

「大体、初めて行われるテストなのだから、欠点かどうかはまだ判断できないだろう。」

「…………この前学年全体で小テストあったじゃん、英語と数学で。」

「ああ。」

「………………………私英語7点数学4点だった。」

「な…!あれは百点満点のテストだろう何故そんなに低いのだよ!!貴様!!!」

「ぎゃあああ怒らないで真ちゃん怖い!」

私は思わず悲鳴を上げる。そんなノンブレスで怒られるなんて思ってなかった怖すぎ真ちゃん。大体、なんでって言われても聞きたいのはこっちだ。なんでこんなに点が低いんだ。

それには一応理由がある。授業の内容が全く理解できないのだ。レベル高すぎて。
確かに、高校受験の時に色々な人に秀徳を受けるのは無謀だと言われた。そして、仮に受かったとしても絶対に勉強についていけなくなるとも言われた。それでも、受かったからには必死で勉強すれば平気だと思っていた。それがまさかこんなにも勉強についていけなくなるとは思っていなかったのだ。

ここはやはり、勉強にも人事を尽くしている真ちゃんの力を貸してもらうしかない。真ちゃんに教えてもらった内容なら意地でも覚えるし確実だ。

「というわけで、勉強教えてください。」

「断る。」

真ちゃんは先程よりもきっぱりとした口調でそう言い放つ。
…しかし、私には勝算があった。

「私、真ちゃんに貸しあるよ。」

「そんなものはないのだよ。」

「あるよ!調理実習!料理教えたでしょ!だから勉強教えて!」

私の言葉を聞いて、ぐっと真ちゃんが言葉に詰まった。そうだ私には真ちゃんに料理を教えたんだ!だからちょっとぐらい勉強を教えてもらったっていいじゃないか!

「はあ…、………仕方がないのだよ。」

「ありがとう真ちゃん大好き!!」

その言葉を待っていたのだよ、真ちゃん。


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