下弦の月は静かに微笑む


部活終了後に知ったが、どうやらあの怒鳴り声は宮地先輩で、その怒りの対象は真ちゃんだったらしい。そのせいで今日は、いつもより多めに宮地先輩に怒られた。
木村さんが、頑張れよという目で見てきたので、目で大丈夫ですと返した。そしてシャトルランで汗を流す真ちゃんをガン見する。大切なのは、いくら心が折れようともそれを癒すことだ。イコール、目の保養である真ちゃんだ。
シャトルランで息の上がってる真ちゃんはとてつもなくかっこいい。綺麗な顔立ちも相まってどこか妖艷な雰囲気さえ感じる。高1の色気じゃねーなあれ。

部活も終わり、仮入部の時とは違う本気の練習量でバテたり吐いたりしている同級生たちを介抱する。真ちゃんもかなりしんどそうだ。
先輩方はある程度体が慣れているのか、さっさと帰り支度を始めている。

少し時間が経って皆も動けるようになり、私は残っているマネージャーの仕事を片付ける。

ふと体育館を見ると、残っているのは居残り練習をしている人たちだけになっていた。
大坪主将と木村先輩と宮地先輩はレギュラーらしく、居残り練習でもかなりハードなことをしていた。

そして真ちゃんはシュート練。真ちゃんのシュートを見るのは私がマネージャーを引退した時以来である。真ちゃんは引退後も体育館で練習をしていたらしいが、私は秀徳の受験勉強に必死でそれどころではなかったからだ。そして仮入部期間は新入生の居残り練習が禁止だった。

だから、この淡々とシュートを打つ姿も久しぶりに見る。機械のように正確に、確実に。

普段は真ちゃんをからかってる私も、さすがにバスケ中にはなにも言えなくなる。可愛いやかっこいいという言葉では表せない、何もいえなくなるような、不思議な気分になる。

周りを見ると、先輩たちも真ちゃんのシュートに釘付けになっていた。あと、気づかなかったけど黒髪センター分けの男の子もいて、見ていた。あの子誰だっけ…。

真ちゃんはボール全てを打ち終わったらしく、ボールを拾いにゴール下へ向かう。私も向かう。
練習のあとに真ちゃんの居残り練習を見て、ボール拾いを手伝って、終わったら一緒に帰る。これが中学の時の王道パターンだった。多分今日からまたそうなるだろう。


先輩たちはもう自分の練習に戻っていた。真ちゃんはボールを拾っていた。横に並んで私も拾う。

「ねえ。」

「なんだ。」

「さっき先輩たち、真ちゃんのシュートに釘付けになってたよ。」

「そうか。」

「うわ、興味無さそう。」

「俺は俺のやるべきことをするだけだ。周りなど知らん。」

相変わらず唯我独尊だ。

でも私は、例え真ちゃんがチームから孤立しても結局は認められると思っている。なぜなら真ちゃんは努力家だからだ。この努力を見て認めない人なんていないだろう。
まあそんなこと口に出したら不機嫌になるに決まってるので、もちろん言わない。

全てのボールを拾い終わると、真ちゃんはまた、ノルマを終えるまで淡々とシュートを打った。



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