猛毒をポケットにいれて


「ほら、部活行くよ。」

「つーか、なんでまたてめえが来たんだよ。」

もっかい喧嘩すっか?と挑発的に笑われ、脳内でビキッと言う音がする。耐えろ私がんばれ私。

「てか、お前って喧嘩つえーの?」

「…まあ、うん、一応。」

今まで色んな人に隠してきたことだが、灰崎には言ってもいい気がした。なぜかというと

「あんたも一緒でしょ。」

「なにが。」

「短気。」

そう、こいつと私は似ている気がしたからだ。主に喧嘩っぱやさが。もしも私が男だったら、灰崎と同じように毎日喧嘩をしていたかもしれない。

「あー、確かに。お前この前めちゃくちゃキレてたしな。」

「自覚してる。だからあんま怒らせないでほしいんだよね。」

「じゃあいちいち来なきゃいーだろ。」

「虹村先輩に頼まれたから、無理。」

そう言って、私は虹村先輩に灰崎をボコってでも部活に連れてこいと言われた旨を伝える。虹村先輩の名前が出た時、灰崎はあからさまに顔をしかめた。分かり易いな。

「だから行くよ。」

「…しゃーねーな。」

よっこいしょ、と灰崎は起き上がった。お?やけに素直じゃないか。もしかしてこれは虹村先輩の名前を出したからかな。だとしたら虹村先輩はどれだけのトラウマを灰崎に与えてきたのだろう。少し気になる。

「意外に素直じゃん。」

「今日は体動かしてー気分なんだよ。」

「へー。」

「行く代わりに何か奢れよ。」

「絶対嫌。」

「うわすっげーブス面。」

「殺すぞ。」

「お前ほんとに女かよ。」

灰崎とは、今まであまり話したことがない割には会話が続いた。内容は酷いものだが。手が出そうになるが相手は選手相手は選手と私は自分に言い聞かせる。

「肉まんな。」

「奢んないって言ってるでしょ話聞けや。」

結局そのあと、灰崎はまともに部活をしていた。自分で呼んどいて言うのもあれだけど、真剣に部活をする灰崎なんて珍しい。レア。


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