近づいてきたのは何事か


※虫注意

「どわああああ!!」

上級生のテストが明けた次の日、事件は朝練のあとに起きた。1年の仕事である練習後の片付けをしていると、突如叫び声が聞こえたのだ。

この声は…多分木村先輩だ。発生源はおそらく男子更衣室。一体何が起きたのだろう。

「俺ちょっと見てくるわ!」

「俺も行くのだよ。」

高尾くんと真ちゃんがそう言って更衣室へと走った。他の一年の人たちも同じように更衣室へ向かう。私も行きたいけど、男子更衣室だからなあ…。

手持ち無沙汰なのでとりあえず皆が置いていった掃除道具を片付ける。すると真ちゃんが、更衣室の方からこっちに走ってきた。

「名字!来い!」

「へ?」

そう言って真ちゃんは私の腕を掴んだかと思うと、そのまま更衣室の方へと引っ張っていく。やだ真ちゃん乱暴!走りながらそう叫んだが無視された。解せぬ。

更衣室の外には人だかりが出来ていた。扉の前には、顔色が真っ青な木村先輩と宮地先輩が立っている。
え、ちょ、マジでなにがあったの。

「なにがあったんですか!?」

「…ゴキブリ。」

木村先輩はそうボソッと呟いた。

ん?…ゴキブリ?

はい?と首をかしげていると、木村先輩は蒼白な表情のまま口を開いた。

「ドア開けたら、ゴキブリが何匹もいたんだよ。マジでキモすぎた…。」

「…おそらく、テスト期間中に大量繁殖したやつらなのだよ。」

「冷静に分析してる場合か!」

「…おい、名字」

真ちゃんは振り返ってこっちを見た。その目はいつになく真剣だ。

「なに?」

「これを使え。」

ほら、と真ちゃんは新聞紙を差し出してきた。確かこれは今日の蟹座のラッキーアイテムだ。受け取れ、と言われたので大人しく受け取る。

「おは朝は本当によく当たる占いだ。」

「ん?」

「とにかく行くのだよ!」

「うお!」

そう言って真ちゃんは更衣室改めゴキブリの住処の扉を開け、私を押し込んだ。え!嘘だろ真ちゃん!
そのまま背後で扉は閉められる。扉越しで「おいなにやってんだ緑間!」「真ちゃん正気!?」という声が聞こえた。
部屋の中を見渡せば、壁を伝って歩くゴキブリが数匹見える。


…まじでか。



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